【医師監修】俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に 携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就 任。2007年、出身地の静岡に俵史子IVFクリニックを開業。最近、 長期不妊の患者さんが体質改善外来を受診した後に妊娠されて、 生活習慣の見直しの重要性を再認識したそう。
やっぴんさん(41歳)からの投稿 Q.35歳で不妊治療をはじめ、36歳で自然妊娠しましたが、化学的流産に。38歳で転院し、顕微授精3回目・凍結胚移植で 一卵性双生児を妊娠するも10週目で流産。その後、再び凍結 胚を移植しましたが、また化学的流産でした。医師によると続 けての流産は「不育症というより、卵子の老化によるもの」と のこと。流産後は採血もホルモン検査もなく、今の自分の本当 の状態がわからないので納得がいきません。このまま同じよう に治療を続けるか、思いきって転院しようか悩んでいます。
不育症について
やっぴんさんは、これまでに流産を3回経験されていますが、不育症の疑いは本当にないのでしょうか。
俵先生 不育症とは、妊娠をしても流産や早産、死産を繰り返して、元気な赤ちゃんを出産できない状態のこと。
2回連続して流産することを反復流産、3回以上連続して流産することを習慣流産と定義づけていますが、このような場合は不育症を疑うことがあります。
やっぴんさんはこれまで3回流産しており、うち2回は化学的流産とのこと。
言葉の定義上は、化学的流産は流産にカウントしないということになっていますが、当院では早めに不育症検査を行うことをおすすめしています。
卵子の老化で流産?
では、流産の原因は卵子の老化にあるのですか?
俵先生 確かに、年齢が上がれば卵子が老化している可能性は高いと考えられますが、それは絶対ではないですね。
卵巣の予備能を調べるためによくAMHなどのホルモンを調べますが、値が低かったとしても、残っている卵子がすべて同じ状態かどうかわかりません。
その他の流産の原因を詳しく調べることなく、「卵子が老化しているから」とひと言で説明をされても納得がいかないというお気持ちはよくわかります。
しっかりスクリーニング!
このような方の場合、俵先生ならどのように対応しますか。
俵先生 ご本人が納得して次の治療に進むためにも、調べられることをチェックして、疑いを一つひとつ消すようにしています。
まず最初は、子宮に物理的異常がないかどうかの検査。
過去にされたかもしれませんが、エコーなどで子宮内のポリープや癒着、奇形などをもう1回スクリーニングしてみます。
次に血液検査で、血栓などができやすくないかという凝固因子や甲状腺機能異常、自己免疫疾患などを調べます。
何回か流産を繰り返した方にはご夫婦の染色体異常の検査も行っています。
40代の場合、早めに進める
それら不育症の検査も問題なく、クリアとなった場合は、まだ妊娠の可能性はあるのでしょうか。
俵先生 流産されたということは、逆に考えれば、まだ妊娠する可能性があるということ。
とはいえ、年齢が 40 歳以上、次回は採卵からの再スタートということですから、現在のホルモン値をチェックしながら、早めに治療を進めていただきたいですね。
思うような検査が受けられない状況でしたら、転院も一つの選択肢になると思います。
※化学的流産:受精卵が子宮に着床したものの、ごく初期の段階で発育が止まってしまうため、妊娠検査薬などでは陽性をみるものの、超音波検査で胎嚢(た いのう)を認めないうちに月経様出血に至る。ケミカルアボーションともいう。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホ ルモン。AMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。