自然妊娠は諦めて体外受精をしたほうがいいでしょうか?【医師監修】

【医師監修】塩谷 雅英 先生  島根医科大学卒業。卒業と同時に京都大学産婦人科に入局。体外受精 チームに所属し、不妊症治療の臨床に取り組みながら研究を継続する。 1994~2000 年、神戸市立中央市民病院に勤務し、顕微授精による 赤ちゃん誕生に貢献。2000 年 3月、不妊専門クリニック、英ウィメン ズクリニックを開院する。A 型・しし座。クリニックでは今春より、心と 体の両面から治療をサポートする統合医療のコーディネート部門がス タート。来年1月には増床によって、クリニック全体が現在の2 倍の規 模に生まれ変わる。
ろびさん(32歳)からの投稿 Q.2006 年より不妊専門クリニックに通院しています。最初のク リニックでは2 度自然妊娠しましたが、流産。次に不育専門の クリニックに転院するも、原因不明で結果が出ず、3 つ目の不妊専門病院で相談受診したところ、子宮腺筋症の疑いが。今ま で高度医療へ進まなくても大丈夫と言われていましたが、妊娠 できません。なんだかどんどん悪くなっているような気も。自 然妊娠はもう諦めて、体外受精をしたほうがいいのでしょうか。

不育症・不妊症の原因

8週目と 10 週目で、2回流産されたということですが、やはり体外受精しかないのでしょうか。
塩谷先生 ろびさんは過去に自然妊娠していますが、その後、2年以上妊娠が成立していないことから、続発性不妊症という診断になります。
また、流産を2回経験されていることから、反復流産という診断も。
よって不妊症、不育症、両面からのアプローチが必要になると思います。
それぞれの原因を明確にし、その後で治療方針を組み立てるべきです。
不妊の原因を相談の内容から推察すると、卵管の異常にあると考えられますね。
理由は、過去2回の妊娠が、いずれも子宮卵管造影検査の後、短期間で成立しているからです。
これは、造影剤を通して卵管の異常が改善された、卵管に問題があったということを示唆しています。
卵管造影や卵管通水・通気治療、場合によっては卵管鏡下卵管形成手術など、卵管の異常に焦点を当てた治療を半年くらい、もう一度試みてもよいと思います。
もちろん、体外受精は卵管因子による不妊症に有効な治療方法です。
すぐに体外受精を選択することも決して間違いではありません。
あらゆる選択肢のなかから、治療法は患者さん自身が選び取ることができるのです。

抗リン脂質抗体症候群

不育についてはいかがでしょう。
塩谷先生 抗リン脂質抗体症候群が原因の一つに考えられます。
これは、8〜9週で流産を繰り返す方にはとても多いんです。
もし抗リン脂質抗体について精査し、異常があれば、アスピリン、ヘパリン療法を試すと効果が期待できるかもしれません。

子宮内膜の問題

子宮内膜の変形があっても、体外受精が成功する確率はありますか。
塩谷先生 ろびさんは、超音波検査で子宮内膜の変形を指摘されているようですが、子宮内膜ポリープや子宮内腔癒着などが懸念されます。
子宮鏡検査を予定しているとのことなので、その結果を待って、もし見つかったら先に治療する必要があるでしょう。
そうすれば、まったく普通の方と同じように体外受精ができますよ。
やはり不育専門医のところで不妊治療を受けたほうがいいのでしょうか?
塩谷先生 理想は、不育にも詳しいドクターのもとで不妊治療を受けることなんですよ。
そのような環境がどうしても整っていないときは、不妊治療、不育治療、それぞれに主治医を持って、ドクター同士が連携して治療にあたっていただくといいでしょう。
当院でも不育治療に力を入れていますが、ほかに不育専門の主治医がいる患者さんもいらっしゃいます。
ドクターとよく相談されてみてはいかがでしょうか。
※子宮腺筋症:子宮内膜に似た組織が子宮の筋膜で増殖してやわらかい筋が硬く腫れ、こぶ状になることもある。 
※子宮卵管造影検査: 造影剤と呼ばれる検査薬を子宮腔から卵管へと注入し、造影剤の流れをレントゲンで観察・撮影して、卵管と子宮の異常がないかを調べる検査。 
※卵管鏡下卵 管形成手術:バルーン(風船)を内蔵したカテーテルを腟から卵管に挿入して、狭くなった箇所でバルーンを膨らませ、卵管を広げる方法。 
※抗リン脂質抗体 症候群:体内に抗リン脂質抗体という自己抗体をもち、習慣性(2回以上)の流産を起こす、原因不明の疾患。治療法として、低用量アスピリン療法、抗凝固剤 のヘパリン、免疫グロブリン療法などがある。 
※子宮鏡検査:子宮内腔に異常があると疑われる場合に、子宮内腔をモニターに映して観察する検査
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