【医師監修】蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院 産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。O 型・おうし座。多忙ななか、劇 団四季のメンバーとの交流を持てたのがプライベートでの喜びだった とか。「仕事から離れて、まったく違う分野の人と交流することは勉強 にもなるし、刺激にもなるんですよ」と蔵本先生。
あいはなさん(38歳)からの投稿 Q.子宮内膜症、卵管水腫、子宮筋腫など、問題ばかりです。採卵 しても 4個ほどで、質もあまりよくないので、毎回1個ほどを 戻しますがうまくいきません。腹腔鏡手術と子宮筋腫の手術も して、顕微授精も7回チャレンジ。ほかの病院でセカンドオピ ニオンを求めましたが、「年齢的にも諦めたら? できる人は4 回までにできるよ」と言われ、精神的に追いつめられています。 生理周期は順調ですが、不正出血もあり、気になっています。 もう諦めたほうがいいのでしょうか?
治療を休むことも大事?
現在、あいはなさんは精神的にも追いつめられ、怖くて治療ができない状態とのこと。
蔵本先生 ずっと頑張って治療を続けてこられたようですから、少し疲れているのかもしれないですね。
休むのは大切なことなんです。
ストレスが溜まると活性酸素が増えて、卵子にも影響が出ます。
また、薬は使い続けることで徐々に効かなくなっていくこともあるので、インターバルをおくのも大切ですよ。
心理カウンセラーやコーディネーターなど、医師以外の人と話す時間を持つのもいいかもしれませんね。
子宮の環境を整える
疾患も多いようですが……。
蔵本先生 不正出血もあるということですし、まずは月経終了後に、子宮ファイバースコープで子宮内膜に増殖性の病変がないかをチェックし、あれば治療をしたほうがいいですね。
明らかな卵管水腫があると、子宮内に分泌物が流れてきて着床率が確実に下がります。
また、再手術が可能であれば、腹腔鏡下手術を行い、子宮に近い卵管の根元を切断したり、クリップでとめて、水腫と子宮腔内の交通を遮断したり、筋腫の切除を行うなどして、悪いところを治してしまうのが先決かもしれません。
卵管予備能から戦略を考える
まずは体を整えることですね。
蔵本先生 あいはなさんは、採卵数が少ないことも気にされているようですから、一度、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の数値を測って、卵巣年齢の目安や、卵子がどれくらいあるかを調べてみてはどうでしょう?
採卵数が少ないからといって落胆することはありません。
いい卵が1個でも採れればいいのですから。
ただ、毎回同じ誘発法ということなので、そろそろ違う卵巣刺激法に変えてみる時期かもしれません。
卵胞数が多くないのであれば、治療の前周期にホルモン補充をして、ホルモン環境を整えてからショート法を行うか、アンタゴニスト法などを行うのもいいかと思います。
採卵後、子宮内膜環境がよくなければ、受精卵を凍結しておいて、別の周期に子宮内膜環境を整えてから凍結胚の融解胚移植を行えば、着床率は以前より上がってくると思うのですが。
方法によっては、まだ可能性はあるということでしょうか?
蔵本先生 確かに採卵4回目までの妊娠率は高いのですが、5回目以降でもたくさんの妊娠症例があります。
休むことも大切なので、その時間を持ちながらも、今までの治療方法を見直して、新しい気持ちで続けられてはどうでしょうか?
まだ諦める必要はないのではないかと思います。