【医師監修】石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病セン ター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008年より久保みずきレディー スクリニック美賀多台診療所副院長。不妊治療から周産期・小児医療まで、 地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、副院長とし て精力的に活動する。A 型・さそり座。「10年ぶりに同窓会の幹事をし ました」という先生。旧友との久々の交流によい刺激を受けたとか。
りきぽんさん(35歳)からの投稿 Q.前回ロング法で採卵し、1個目を3日目に移植。ホルモン補充 法で2 個の凍結胚盤胞を1個ずつ移植しました。胚移植後の 生理痛がかなりひどいので、がん検診を受けましたが、検査で 異常は見つかりませんでした。胚盤胞のグレードも内膜の状態 もよいと言われているのに、このまま同じ治療を続けていてよ いのか不安です。年齢のこともあり、転院も考えています。
運動率にバラつき、顕微も視野?
1回目の採卵で5個採卵。うち3個を胚盤胞で移植されたとのこと。しかし、残念ながら妊娠には至りませんでした。
石原先生 ロング法での採卵としては、数が少なめではありますね。
3個受精したということは 60 %の受精率ですから、平均的です。
ただ、胚盤胞も含め、全ての受精卵を移植にまで持っていくことができたと
いうことですので、状況はむしろ良いほうだと思いますよ。
分割、培養に関しては問題ないと思います。
ご主人の精子の運動率にかなりバラつきがみられますので、もし次に方法を考える場合は、顕微授精も視野に入れて考えてみてはいかがでしょうか。
また、卵子がたくさん採れるのであれば、半分を通常の体外受精、半分を顕微授精で受精させるスプリットICSIも一つの方法だと思いますよ。
着床率を上げたい!
少しでも受精率を上げるということですね。着床の問題についてはいかがでしょう。
石原先生 着床を促進する方法としては、レーザーや薬剤を使う補助孵化療法のほか、近年はシート法が注目されています。
シート法とは、受精卵を胚盤胞まで培養したときにできる培養液をいったん凍結しておいて、胚盤胞を移植する2〜3日くらい前に子宮内に入れるというもの。
胚の成長の過程で分泌される物質が多く含まれた培養液を使って、母体側の胚の受容度を高めるのが狙いです。
ホルモン補充周期、自然周期のどちらのケースでも可能です。
多様な治療の選択肢
生理痛や生理周期の乱れも気になっているようですが。
石原先生 体外受精の場合、陰性の判定が出たときは、かなり精神的に参るんですよね。
特に判定日の前後などは、すごくストレスがかかるようなので、それが生理のときに表れているのだと思います。
検診の結果に異常がないようでしたら、それほど気にすることはないでしょう。
転院も考えているということですが、3個の受精卵を胚盤胞まで成熟させ、3個とも移植できたということは、培養室のレベルは高いと思います。
ですからあとは、どの治療法を選択するかということ。
りきぽんさんの場合、前述の顕微授精やシート法など、まだまだ治療法はいくらでもあると思いますから、むしろ望みを持ってほしいですね。
主治医とよく相談し、ご主人ともどもリフレッシュしながら、今後も治療を続けていくのがいいと思います。