【Q&A】着床不全とセカンドオピニオンについて~藤本先生

なかなか着床しない…どのように治療を進めていくべきか??

藤本先生に聞いてきました

藤本 尚先生

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

Waiwaiさん(35歳)

これまで、凍結胚盤胞移植を6回行いましたが、一度も着床していません。6回中2回は、2個移植でした。
グレードは、拡張胚盤胞Aaが4回、拡張胚盤胞Abと胚盤胞Aaの2個移植、そして拡張胚盤胞Bbと胚盤胞Abの2個移植です。
いずれもアシステッドハッチング(AHA)あり、GM-CSFオプションありです。
これまで受けた検査結果は下記の通りです。
●子宮ファイバースコピー(子宮鏡)検査:異常なし
●トリオ検査(ERA/EMMA/ALICE):窓のズレ、異常なし
●不育症スクリーニング検査(免疫機能検査、血液凝固因子、凝固阻止タンパク、抗リン脂質抗体検査、染色体検査):th1/th2細胞
比が高め(13.1%)⇒ プログラフ1mg(タクロリムス)を朝夕1錠ずつ服用。
●潜在性甲状腺機能低下症の疑いあり:チラージンSを朝1錠服用。
残りの凍結胚盤胞䛿1つですが、冬の間は一度治療をお休みし、春になったら、もう一度採卵からやり直そうと思っています。
1.これまで一度も着床していないのですが、他に考え得る原因や、受けるべき検査はありますか。卵側の原因なのか、血流などの問題なのか… このまま採卵と移植をひたすら繰り返すしかないのでしょうか。
2. セカンドオピニオンを受けたくても、田舎のため病院の選択肢が少なく、どうするべきか悩んでいます。詳しい検査結果が分かれば、紹介状なしでも、セカンドオピニオンを受けることができる病院もあるのでしょうか。
今通っている病院の医師は、話を聞いてくれる雰囲気が全くありません…。本当は色々と質問・相談したくても出来ずに悶々としています。
ただ、県内では施設・技術面で「最後の砦」とも言われている病院なので、転院するのも躊躇しているのが現状です。
お忙しい中恐れ入りますが、アドバイスを頂ければ幸いです。

Waiwaiさん、こんにちは。

さっぽろARTクリニックn24の藤本と言います。

早速ですが、ご質問の返答を書いていきたいと思います。

1回の採卵で9個の胚盤胞を凍結することができたのはとても優秀な成績ですね。そして6回の胚移植で8個の良好胚盤胞(おそらくGardner分類と思いますがAA×5個、AB×2個、BB×1個)の移植ですべて着床していないとなると、Waiwaiさんの年齢(35歳)を考えると明らかに確率以上に妊娠していない。つまり何かしらの着床できない原因があるものと推測できます。それもあるので着床不全、不育症関連検査もある程度されていて、必要な対策も取られているのが伺えます。他にする検査としては、ご夫婦の染色体検査(均衡型転座などの有無を調べる)などがあります。ただ、これは原因がわかるだけで対策(治療)は行うことができません。ご夫婦のどちらかに染色体異常があった場合には着床前検査(PGT)を行うことで、染色体異常の胚を移植するリスクを避けることができます。幸い、Waiwaiさんはおそらく1回の排卵誘発で多くの胚を得ることができる人だと思いますので、着床前検査を事前に行い正常染色体胚を得られる可能性が十分にある人だと思います。

わたしであれば、前述のご夫婦の染色体異常を行うか?行わない場合でも、今後は形態評価である良好胚盤胞(ここでは形態評価のみで正常染色体を担保しているわけではない)を戻すのではなく、着床前検査を行い正常染色体胚の移植を数回行いたいと思います。そのためには胚盤胞が1個残っていますが、再度改めて排卵誘発の上で採卵を行いたいと思います。正常染色体の胚移植でも妊娠率は60%台なので2~3回は胚移植を行いたいです。妊娠出来ればOKですが、できない場合は着床不全の原因が胚ではなく、それ以外の因子である可能性が高くなる(これは不明ではあるが、原因となる因子を胚以外と絞り込める)ので、さらなる原因検索を検討したいと思います。

最後にアドバイスです。

医師は患者さんの希望をできるだけくみ取って診療を行うようにしています。でも、顔に希望が書いてあるわけではないので完全にすべてをくみ取ることは困難です。Waiwaiさんの主治医の先生は話を聞いてくれる雰囲気ではないと記載していますが、ここは思い切ってWaiwaiさんから提案をしてみて欲しいなと思います。勇気がいるかと思いますが、質問できず悶々としていても前に進めません。一歩踏み出して先生に質問して、それでいい返事が得られない場合、その時には転院も含めて考えてみてもいいかなと思います。聞き方が難しいかもしれませんが、“ここまで8個の良好胚盤胞移植しても着床できていないので、このまま同じことしていてもうまくいく気がしません。他に何か検査することはありませんか?”とか“夫婦の染色体検査あるいは、着床前検査をするのはどうですか?”と聞いてみてはどうでしょうか?

セカンドオピニオンはJinekoさんのこれがセカンドオピニオンになっているのかなと思います。今回のWaiwaiさんの質問にもきっと僕も含めて複数の先生が返答してくれていることと思います。それらを参考に、まずは今の主治医の先生にWaiwaiさんの思いをぶつけてみましょう。

不妊治療には修正できる原因と、修正できない原因があります。修正できない原因で一番多いのは年齢です。やはり年齢が高くなるほど妊娠率は低下していき、年齢は修正できません(若返りの薬は売ってません)。Waiwaiさんは35歳なので年齢はまだまだ十分にチャンスのある年齢です。まだまだ勝負はこれからです!。ここまでも大変苦労されていると思いますが、くじけずに頑張りましょう。困難の先にうまくいったときには、喜びもひとしおなはずです。Waiwaiさんの成功を陰ながら応援しています。

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