精液検査の結果が正常値ぎりぎり人工授精に進むべき?【医師監修】

男性因子の不妊が疑われる場合、精液検査の結果は ステップアップを考える要素の一つと言われています。 どう判断したらよいのか、小田原先生にお聞きしました。

【医師監修】こずさん(会社員・30歳)からの投稿 Q. 子どもを望むようになって7ヶ月。不妊治療歴3ヶ月です。 先日、精液検査をしたら、精液量4.8mL、精子濃度3,360万/mL、 運動率60.1%、高速直進率18.2%という数値でした。 高速直進率以外は正常値だと思うのですが、病院では低いと言われました。 夫婦ともに今年31歳です。人工授精にステップアップするべきでしょうか?

ドクターアドバイス

女性の年齢を一番に考えたら、 次の段階に進んでもよいと思います
こずさん(会社員・30歳)からの投稿 Q. 子どもを望むようになって7ヶ月。不妊治療歴3ヶ月です。 先日、精液検査をしたら、精液量4.8mL、精子濃度3,360万/mL、 運動率60.1%、高速直進率18.2%という数値でした。 高速直進率以外は正常値だと思うのですが、病院では低いと言われました。 夫婦ともに今年31歳です。人工授精にステップアップするべきでしょうか?

精液検査の基準

こずさんの場合、精液検査の結果が微妙で、担当医からは数値が低いと言われたそうですが、小田原先生はこの結果をどうみられますか?
小田原先生 世界保健機関(WHO)の精液検査の参考値によると、精子濃度は2000万/ mL 以上が正常ということになっていますが、臨床でみている感覚としては2000万/mL というのはかなり低い数値だと思います。これは体外受精が必要になってくるレベルで、正常というのは5000万/ mL 以上の数値という印象がありますね。
こずさんのご主人の結果は3000万台ということですから、やはり若干少なめということになるのではないでしょうか。
では、この精液検査の結果は問題があるということですか?
小田原先生 これが1回目の検査ということであれば、まだはっきりとした診断はつけられません。精子の所見というのは変動があるもので、何回かみて、その方の傾向を調べる必要があります。その日の体調やストレス、禁欲期間などにより、かなりバラつきが出ることがあるんですね。ですからこの方の場合は、あと2回くらいは検査を受けることをおすすめします。

再検査と他の検査

男性因子の不妊が疑われる場合、精液検査に加え、ュナーテストも受けられる方がいますが、この検査も重要なのでしょうか。
小田原先生 ヒュナーテストは、性交後の子宮頸管粘液の中にある精子の状態をみる検査。精子がいるのかどうかを調べるためにはやってみる必要のある検査だと思いますが、そこで精子があっても、実際にそれが卵管までちゃんと到達しているかどうかということまではわかりません。精子の数はある程度あったとしても、その形がよくなかったら卵の中には入っていけませんし……。
ヒュナーテストは絶対ということではなく、正常な結果が出ても人工授精を適応する場合もあります。
こずさんのご主人の場合はとりあえず精液の再検査ということで、これ以上のより詳しい検査は必要ありませんか?
小田原先生 この方の精子のレベルは、精液の再検査だけでよいかと思います。かなり悪い数値が出た場合は、泌尿器科の専門医に一度診てもらって、女性と同じように脳下垂体からのホルモンの低下がないか、あるいは精管や精嚢のどこかに炎症や閉塞がないか、などを調べることになると思います。

ステップアップの考え方

こずさんは人工授精へ進むことを迷っているようですが、ご主人側の問題がまだはっきりしていないということなので、急ぐ必要はないでしょうか?
小田原先生 こずさんは不妊治療歴3ヶ月ということですが、すでにタイミング法などにトライされているのなら、あと1〜2ヶ月タイミングをみて、それで妊娠されなかったら、次のステップアップを考えられてもいいのではないでしょうか。
あと1〜2ヶ月ということは、そろそろ次を考えても決して早すぎる時期ではないということですね。
小田原先生 そうですね。男性側の妊原因を探ることも大切ですが、やはり女性の年齢を一番に考えて治療の方針を立てていくことが重要だと思います。毎月タイミングをとった場合、 25 歳前後の女性であれば妊娠率は 25 %程度ですが、 30 歳になると 15 %程度に。
こずさんの年齢でタイミングを3〜4回とられても結果が出ないようでしたら、自然妊娠という方法だけにこだわることはないのかな、という気もします。

不妊治療に必要な心構え

こずさんが迷っているのは、もしかしたら、人工授精に対してまだ心の準備ができていないからかもしれませんね。
小田原先生 あと数ヶ月タイミングをおすすめするのは、ご本人が納得する時間をおくという意味もあるんですね。やはり不妊治療には、どのステップにおいても「この時期でよかったのか」という迷いが患者さんにあると思うんです。遅すぎるのもよくないけれど、早すぎても治療に快く臨めない。
効率だけでどんどん進めていく治療ではないんですね。ですから、ドクターとご夫婦で常に心と体の状態の接点を見つけながら、治療をステップアップしていくことが大切なのだと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。