受精卵の状態はいいのに なかなか妊娠できません 不育症を検査するべき?【医師監修】

【医師監修】渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病 院産婦人科、大津赤十字病院、済生会茨木 病院などを経て、1971年に父親の意思を引き 継いだクリニックを地元で開院。不妊治療から 分娩まで手がけ、365日24時間の診療体制 をとる。O型・おとめ座。「西国三十三所」の 札所巡りが気分転換! という渡辺先生。で も最近は忙しくて出掛けられないのが残念。
小花さん 34歳 Q. 毎回、非常によいと言われる受精卵を 移殖しているのですが、胚盤胞でも分割胚でも なかなか妊娠に至らないのは、 生理の量が減ってしまったせいでしょうか? それとも一度、不育症の検査をしたほうがいい? 左側の卵巣の動きが悪いのも気になります。

月経量と内膜の厚さ

小花さんは月経の量が減ったことを気にされていますが、着床不全や不育症と何か関係がありますか?
渡辺先生 子宮内膜がはがれて体外に排出されるのが月経ですが、経血の量が減っているということは、子宮内膜が薄くなっているという可能性がありますね。ただ、5㎜程度の厚さでも妊娠する例はありますし、私は子宮内膜がすべてではないと考えています。
左側の卵巣の動きの悪さも気にさ れているようですが、もともと大きさに左右差がある人もいますし、片方があまり排卵誘発剤に反応しないこともあります。右側が働いていて卵が採れるなら、それは気にしなくても大丈夫だと思いますよ。

不育症検査の必要性

不育症の検査は必要ですか?
渡辺先生 不育症であっても、着床するところまでは行けると思います。小花さんは一度流産されているので、検査をしてみるのはいいかもしれません。
それで原因が必ずつかめるとは限りませんが、卵管留水腫の検査はしたほうがいいですね。これは卵管に慢性的に炎症性の物質がたまってしまう病気です。たまった液体が少しずつ子宮に逆流し、きれいな受精卵を戻しても着床しないというケースがありますので。

1つのやり方に固執しない

また、体外受精の移殖回数が 10 回を超え、気分の落ち込みも激しいようです。先生からよいアドバイスがありますか?
渡辺先生 着床不全については、原因の解明がまだあまり進んでいません。同じ方法を何度も繰り返すのもいいですが、行き詰まったときはいろいろな方法を試してみたほうがいい。
私は卵の質をよくするために、 ※ナゾールを使うことがあります。本来は子宮内膜症のための内服薬ですが、卵の質をよくしたり、着床が改善されるのではという、学会の報告があります。また、転院するくらいの覚悟で、セカンドオピニオンを求めるのも悪くないでしょう。
※ダナゾール:子宮内膜症治療薬。エストロゲン合成を阻害して、子宮内膜症組織を萎縮させたり、細胞増殖を抑制する。
不妊治療はある程度のセオリーはあるが、やってみないとわからないという側面がある。コレがダメなら次はコレというように、いろいろな作戦を持っている先生がいい先生だと思いますよ。
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