監修 セントマザー産婦人科 田中 温先生 順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後なら という条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験 は毎日深夜までに及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男 児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。不妊治療のトッ プリーダーとして、医師たちからの信頼も厚い。AB型・やぎ座
ドクターアドバイス
医師に不安や疑問を感じたら、転院するのも一つの選択です。
ちゃんまるさん 33歳 Q.主治医のすすめでAIH※にトライして 2回目もダメでした。 私は体外受精のほうが確実だと感じるのですが、 「ヒューナーテスト ※が良好な場合、 IVF※はすすめない」と先生に言われてしまいまし た。いったい何が原因なのでしょうか?
ちゃんまるさん のデータ
●検査・治療歴 不妊治療上必要な血液検査全般→特に問題なし ヒューナーテスト→良好 通気検査→抵抗なし 腹腔鏡検査→精子通過良好・卵管狭窄軽度あり・両卵管采棒状 タイミング法9ヶ月、AIH2回トライ
●処方されている薬 セロフェン5日間、デュファストン14日間内服あり。 点鼻薬AIH2日前使用あり
●精子データ 数は不明(結果表に印字なし)、量は3ml/回 濃度17~51×107(処理後25~61) 運動率24~57%(処理後77~98%) 奇形率6~13%
子宮の状態の確認方法
今回はぜひ田中先生に意見を伺いたいという、ジネコユーザーの方の相談内容を詳しい診断データとともにお持ちしました。原因不明のままAIHにトライしているのですが、ご本人は体外受精にステップアップしたい、でも担当医は消極的、ということなのですが……。
田中先生 ちょっと待って。じっくり読ませてね(そう言って、しばらくデータに目を通す先生)。
ちゃんまるさんのデータの中で気になる部分はありますか?
精子通過も調べているんだね。これを調べる先生は少ない。子宮に精子を入れて腹水をとり、そこに精子がいれば通過良好。精子が本当に卵管の先端までたどり着いているか調べる、それなりに意味のある検査なんだよ。
卵管の状況
卵管の状態はどうですか?
田中先生 卵管狭窄というのは内腔の状態なので、腹腔鏡検査ではわかりません。おそらく、子宮卵管造影の検査で診断されたんだろうね。あとは、卵管采棒状……。
クラミジアが陽性なら、この方の卵管はあまりよい状態ではないと言えます。
※クラミジア感染症:微生物であるクラミジアが原因となり、尿道、子宮頸管や卵管内に炎症を起こす性行為感染症。
精子所見について
では男性側の検査、精子データについてはいかがでしょうか。
田中先生 量は3 ml というのは立派な数字だね。運動率は少し弱いかな。でも、もっと重要なのは運動性なんですよ。チョロチョロなのか、元気に動いているのか、精子の運動の仕方を調べるのが重要なのね。
+++の活発な精子が2〜3割いたら問題なし。だから、まだ運動性を調べていないようなら、もう一度きちんと検査してもらってください。
ヒューナーテストが良好だから大丈夫、ということではないんですね。
田中先生 ※ヒューナーテストが良好というのは、動いている精子がたくさんいるということだけなんです。それよりも精子の運動性。これが大事なんですよ。
※ヒューナーテスト:性交後、子宮頸管粘液を採取して、精子や頸管粘液の状態を調べる検査。
総合的にみて、ちゃんまるさんの一番の問題点は……。
田中先生 精子については、運動性をきちんと調べること。それから卵管采棒状については、まずクラミジア検査を受けることをおすすめします。もし陽性だったら、薬を飲めば治る病気ですから。
ただし、変形の程度によりますね。ソーセージみたいに膨らんでしまっていたら卵子のピックアップに支障をきたすので、変形の程度が中度から重度だったら僕は体外受精をおすすめします。
体外受精へのステップアップ
先生がご指摘された部分をもう一度きちんと調べて、大きな問題がなければこのままAIHをトライし続てもいいですか?
田中先生 担当医を信頼できるようなら、あと2〜3回続けてもいいと思います。でも、ちょっと疑問なのが「有効率が2%しか変わらない」とおっしゃっていること。これは間違ったデータですよ。
一般的な体外受精の有効率は 35 歳以下で 50 %前後、人工授精では 10 %届きません。
ドクターとの正しい関係
そのへんはもっと先生に詳しい説明を求めたほうがいいですね。
田中先生 そう、とにかく納得するまで医師に質問すること。怒ったり、患者の意見に耳を貸さないような医師ならやめたほうがいい。自信がないから怒るんですよ。
不安を感じたり、相性が合わなかったら転院することも一つの選択だと思います。
とにかく不妊治療で大切なのは、患者側は「この病院なら妊娠させてもらえる」、医師側は「この患者さんを何とか妊娠させてあげたい」という気持ちを双方が持つことですよ。そういう関係がないと長続きできないんじゃないかな。
今回も熱く語ってくださった田中先生。 「1人でも多くの人を妊娠させたい」という熱意とオーラに取材スタッフも圧倒されっぱなしでし
た!
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