【Q&A】精索静脈瘤手術で精子は改善する?~寺井先生【医師監修】

かなすさん(35歳)

テンガルーペで精子が数匹のみ、精索静脈瘤の可能性があります。
手術をすることで精子が改善する可能性はありますか?
また、それにより妊娠の可能性は高くなりますか?

泌尿器と男性不妊のクリニックの寺井先生に聞いてきました

【医師監修】泌尿器と男性不妊のクリニック 寺井一隆 先生 
2002年順天堂大学医学部卒。杉山産婦人科の生殖医療科(新宿)などへの勤務を経て、2022年4月に泌尿器と男性不妊のクリニックを開院し、院長に就任。全国でわずかしかいない泌尿器科の男性不妊専門医として多くの不妊に悩む男性患者さんの気持ちを汲み取った診察を行う。日本生殖医学会生殖医療専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

① 精索静脈瘤の手術で精子の改善は期待できますか?

はい、十分に期待できます。
手術(特に現在主流となっている「顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術」)を行うことで、約60〜80%の患者様で精子の状態が改善すると報告されています。

● 改善が見込める主な指標: 精子濃度、総精子数、精子運動率、正常形態率
● 効果が表れる時期: 精子が新しく作られて体外に出てくるサイクル(約74日)を考慮し、一般的には術後3ヶ月〜6ヶ月以降の精液検査で改善の有無を確認していきます。

② 手術後、妊娠の可能性は高くなりますか?

はい、自然妊娠・生殖補助医療(人工授精体外受精)ともに、妊娠率の向上が期待できます。
精索静脈瘤の手術は、単に「精子の数や動きを良くする」だけでなく、精子の「質(DNAの質)」を改善する効果があります。そのため、結果として妊娠の可能性を底上げすることができます。

● 自然妊娠への影響: 術後に自然妊娠に至る確率が有意に高くなることが多くの研究で分かっています。
● ステップアップ治療への影響: すでに人工授精(AIH)や体外受精(IVF)、顕微授精ICSI)を行っている場合でも、手術によって受精率や着床率の向上、さらには流産率の低下が期待できます。

③ 精索静脈瘤が不妊に与える具体的な影響を教えてください。

主に「熱」と「酸化ストレス」が、精子を作る工場(精巣)にダメージを与えます。
精索静脈瘤は、精巣から心臓へ戻る血液の静脈弁がうまく働かず、血液が逆流して網の目のように腫れてしまう病気です。これが不妊を引き起こす主な理由は以下の3点です。

1)精巣の温度上昇
精子は熱に非常に弱く、本来は体温より1〜2℃低い環境で活発に作られます。しかし、温かい静脈血が精巣の周りに鬱滞(うったい)することで温度が上がり、精子を作る機能(精子形成能)が低下します。
2)低酸素状態とうっ血
血液の流れが滞ることで、精巣組織が酸欠状態になり、必要な栄養が行き渡りにくくなります。
3)酸化ストレスの増加(精子DNAの損傷)
血液のうっ血により精巣内で活性酸素が過剰に発生します。これにより、デリケートな精子のDNAが傷ついてしまう(精子DNA断片化)ため、たとえ通常の精液検査で数値が正常に見えても、受精能力や胚の発育に悪影響を及ぼすことがあります。

④ 精索静脈瘤の手術におけるリスクやデメリットについて教えてください。

術式によって異なりますが、現在主流の「顕微鏡下手術」ではリスクは極めて低く抑えられています。
どのような手術にも一定のリスクはありますが、顕微鏡で血管やリンパ管を拡大して確認しながら行う「顕微鏡下低位結紮術」は、合併症のリスクが低い安全性の高い手術です。

【主なリスク・合併症】【顕微鏡下手術での状況】
陰嚢水腫(精巣の周りに水が溜まる)リンパ管を確実に温存できるため、発症率は1%未満と非常に低いです。
精巣萎縮誤って精巣動脈を縛るリスクですが、顕微鏡下では動脈を識別して温存できるため、ほぼ起こりません。
再発微小な静脈も見逃さずに処理できるため、再発率は1〜2%程度に抑えられます。
術後の痛み・血腫一時的な痛みや内出血はありますが、数日から数週間で自然に軽快します。


・デメリットについて
手術に伴う最大のデメリットは、通院や手術費用の負担、および術後数日間は激しい運動や重いものを持つなどの日常生活への制限が生じる点です。

⑤ 他に推奨される治療方法があれば教えてください。

基本的に精子の状態を改善させるためには、手術が最も確率の高い方法となります。ただし、治療のゴールが妊娠、出産であれば、人工授精や体外受精、顕微授精などの不妊治療により妊娠、出産を目指すという考え方もあります。

 

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