【体験談】情報を見極めて治療を選択し、最善を尽くしました。

 

悩むより現実を知って前に進みたかった
情報を見極めて治療を選択し、最善を尽くしました。

医師の提案で人工授精を複数回試すも陰性を繰り返し、流産も経験。
「さすがにおかしくない?」と情報を集め、ようやく治療がうまくいかない理由とその対策にたどり着いたM・Hさんは、妊娠の可能性を高めるために自ら希望した治療計画を実践しました。

妊娠しない日々が続くも不妊原因は指摘されず……

M・Hさん(42歳)が夫のS・Hさん(43歳)と結婚したのは28歳の時。「夫としては、年齢で焦る必要がないし、同棲していたから結婚で何か変わることもないと思っていたみたいです。でも、私は子どもが欲しかったし、もうすぐ30歳になるという現実もあって、そろそろはっきりしてよって伝えたのがきっかけです」。
結婚後すぐに地元の産婦人科を受診し、ひと通りの検査を受けたMさん。「一般的な妊活をすれば大丈夫ですよ」と医師からのお墨付きで自己流のタイミング法を開始しましたが、1年近く経っても妊娠しなかったことから不妊専門クリニックへ転院。そこで受けた検査でもお互い特に問題はなく、医師からの提案で人工授精を行いましたが3回目まで陰性が続き、4回目で初めて着床するも6週で流産という結果でした。それでも「費用対効果を考えると、30歳前半で体外受精をするのは早すぎる場合がある」「もう少し、人工授精で粘ってみてもいいんじゃないか」と主治医はそこまで焦っていないような印象で、二人もまだ「なんとかなるだろう」とあまり気にしていなかったそう。きちんと排卵し、卵管も通っていて、目に見える問題がなかったことから、しばらく人工授精で様子を見ることにしました。

「私、怪しいかも…」検査を希望し、転座が判明

流産後も変わらず人工授精を続けていましたが、10回目に差し掛かった頃から「先生はそう言ってるけど、さすがにおかしいんじゃない?」と疑問に思うようになったMさん。初めて主治医に意思表示をして体外受精にステップアップしましたが、2回移植してどちらも陰性。胚の発育も「年齢にしては良くない」と言われたことをきっかけに、本格的に不妊について調べ始めました。
「その過程で母が若い頃かかった病気や家族構成のことなどを考えるようになり、私は転座という現象が当てはまっているかもしれないという結論にたどり着きました」 主治医に転座の検査を依頼した際に「離婚原因になることもあるため、病院側からは特にお勧めしていません」と言われたそうですが、原因不明の状態に対するモヤモヤは大きく、どんな結果であっても糸口になることは知りたいと切望していたMさんは「どうしてもやりたいから、検査させてください」と諦めませんでした。「それが原因で自分たちが変わるわけではないから、検査しよう」と前向きなSさんの後押しもあり、クリニックでは通常扱っていない検査キットを取り寄せてもらって、転座検査を実施しました。
そして約1週間後、Mさんの均衡型相互転座が判明。今までの検査で「異常なし」「原因不明」と言われ続けてきたMさんは、自ら行動し、ようやく妊娠できなかった理由にたどり着いたのです。
ところが、転座など染色体の構造異常をもっている場合に受けられるPGT -SR(着床前胚染色体構造異常検査)も、PGT -A(着床前胚染色体異数性検査)も、当時の日本産科婦人科学会のガイドラインでは流産・死産を2回以上繰り返すことが条件の一つに入っていたため、流産経験が一度だけのMさんは対象外。これまでの流産や着床不全の明らかな原因がわかったにもかかわらず「流産回避の可能性が高い胚盤胞を子宮に戻す方法」がこの段階では受けられないのも現実でした。
「当事者としては理解し難いことですが、もう一度流産することを前提に、PGT -SRを実施しているクリニックに転院しました」

自己防衛を働かせて、“期待しないモード"を更新

培養技術が高いという評価をもとに転院したものの、Mさんがもつ転座はそもそも検査に出せる胚盤胞を育てることすら難しいものでした。そこで、少しでも可能性を高めるために再び転院してPGT -Aを受けることに。1回目の検査で正常胚はゼロでしたが、2回目は5個の胚盤胞の中で一つだけ正常胚を得ることができたのです。そして、そのただ一つの正常な胚盤胞を移植すると着床という嬉しい結果に。
「体外受精を始めてからは、自己防衛という意味で回を重ねるごとに“期待しないモード”を更新し、最後は期待値がほぼゼロに到達。着床したと言われてもダメだった時の落胆が大きいから、あまり期待しないようにしていました」
そう語るMさんでしたが、着床後の経過は順調そのもの。お腹の中で確かに存在する命はすくすくと成長し、無事に出産の時を迎えます。そうして生まれてきてくれた息子のAくん。今年5歳になる健康優良児です。

5年半の不妊治療は選択と意思決定の連続

4カ所の医療機関に通い、採卵と移植はともに7回。採卵した卵子は50個以上にもなり、PGT -Aに出した胚盤胞は9個。「いち患者が取れる手段の最善を尽くすしかない」と、およそ5年半の不妊治療の中で治療や検査の選択と意思決定をほぼ自身で行ってきたMさん。2017年に発足して現在500名以上が在籍する「不妊・不育のためのPGT患者会」では理事を務め、自身の経験を生かしながら今まさに治療に向き合っている方々の心の拠り所としてメンバーとともに活動し続けています。
「仕事が忙しかったこともあり、治療のことだけで精神的につらいという実感はなかったつもりだけど、実は抑圧されて自分らしさを失っていたことに気づきました。皆さんも、もし今、治療がうまくいっていないとしても、十分頑張っていると思うので、頑張りすぎず、自分に優しくあり続けてほしいと思っています」

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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