【Q&A】採卵27回陰性、精子因子を含めた再検討が必要?~宇津宮先生【医師監修】

めばえさん(35歳)

私は現在35歳で、30歳から不妊治療のためにクリニックに通っています。
これまで採卵27回、移植を10回行い、考えられる検査もたくさん行ってきましたが、すべて陰性で結果が出ていません。AMHが0.2と低いため採卵回数が多くなってしまうのは仕方がないと思うのですが、27回もやって結果が出ない状況です。
保険も使い切り自費治療も4回やっているので、経済的にも精神的にも苦しいです。このまま同じ方法(体外受精・顕微授精)を続けるしかないのでしょうか。
他に考えられる治療方針や選択肢があるのか、先生のご意見を伺いたいです。

宇津宮先生に、お話しを聞いてきました。

【医師監修】セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,500 件を超える。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

めばえさんの経過で最も気になるのは、97個のうち胚盤胞まで育ったのは2個のみであることです。97個なら20-30個は胚盤胞になりそうですが?

分割期から胚盤胞になる時期(受精3日目)までは受精卵の成長は卵子由来の遺伝子が担い、3日目からは精子由来の遺伝子が加わると言われています。よって、3日目以後の成長が良くないのは精子に原因がある可能性を考えるべきです。しかし、めばえさんの受精率、分割率が分からないのでそこから考えねばなりません(タイムラプスを含め)。受精率、分割率が良くないなら(受精率は80%、分割率は70%、胚盤胞率は40%くらいなら正常)卵子の質が気になります。

それらを考えて、

AMH0.2なら積極的排卵誘発(ショート法、またはウルトラショート法+大量(450-600IU)HMG)プラスDHEA内服(唯一と言ってよいほどのエビデンスあるサプリ、ただし妊娠したら即中止)で治療するべきです。ただし、この積極的排卵誘発で1-2個しか卵子ができないなら低刺激法も仕方ないかと思います(ますます可能性は低くなりますが)。

精子は本当に良いのでしょうか。一般的に男性由来不妊は50%近くあります。奇形率はWHO方式で出していますか?少しでも精子が良くなかったら手術的精子採取法でフレッシュな精子を採取してICSIするのもよいでしょう。

ゆっくり休みたいならその間はカウフマン療法で積極的に女性ホルモンを補充しながら休むことです。女性ホルモン(エストロゲンプロゲステロン)は卵巣・卵子活性化に有効です。何もしないならますますAMHは下降し、閉経に近づきます。

今更ですが、外来では何も異常なしと言われたにもかかわらず妊娠しないなら何か今までの検査でわからないことがありそうです。そこで当院ではステップアップして腹腔鏡検査をおすすめします。すると80%以上に子宮内膜症が見つかり、それを焼却し、骨盤内を洗浄して治療すると3-4ヵ月以内に自然妊娠が(30-40%)得られます。

めばえさんは5年以上も不妊治療をしています。きつくなるのも当たり前です。もう不妊治療については専門家と言ってよいほどでしょう。そこで、ご夫婦での楽しみを見つけましょう。二人で子どもができたらできないこと、例えば旅行や芸術鑑賞、音楽会、心地よい程度の運動、アウトドア活動、野菜作りなど、二人で一緒に体を動かすと今まで見えてなかった景色が見えることもあります。ご夫婦の生活は今後もずっと続きます。生活に楽しいことがなければ何のための生活か。めばえさんはもう十分妊活を行ってきました。そこばかりに目を向けるのでなく、ご夫婦でほかにも楽しいことを見つけましょう。楽しいことをしながら妊活も時々行う、でよいかと思います。

なお、通水検査、ホルモン負荷検査、TRIO検査、フローラなど、いまではまったくエビデンスはありません。無駄な検査です。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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