【Q&A】着床しないのにPGT-A胚を戻しても意味はない?~稲垣先生【医師監修】

ぽんさん(38歳)

甲状腺ホルモンTSHが元々2.5以上で昨年11月に体外受精を開始しました。
8月健康診断で自費で調べたら3.8。11月最後の体外受精(保険適応)前4.3。と上昇あり。
何度か相談してはいたのですが、気にしなくていい数値ということで無治療で来ています。
今回は基準値超えのため、紹介状をいただいて受診予定です。

子宮鏡では小さいポリープがいくつか見えます。入口の方とは言われました。
体外受精6回は全て陰性。かすりもしないhCG0.5よりはあったけど、1も行かないのが2回あっただけです。
子宮鏡などの検査もしたから、もう採卵移植を繰り返すしかないとのことで、6回移植をして陰性で終わりました。

不妊の原因であったのか定かではないですが、甲状腺ホルモンを整えたところで今後妊娠の可能性はあるのでしょうか。
整えたところで、すでに6回移植しているにも関わらず一回も着床すらしなかったので治療をする意味があるのか。可能性は限りなく低いのか。もしかしたら2.5以上の時点で治療するべきであったのか。
無知が招いた結果ではあると思っていますが、本当に気にしなくていいホルモンなのか治療すれば違うのか、知りたいです。

またポリープも取ってみたら少し変わるのではないかと素人考えなのですが「小さかったりすると掻爬術しかない」「内膜に影響があるからお勧めしない」と言われました。小さい場合はレーザーでの対象にはならないでしょうか。年齢的にもやる意味はないのでしょうか。リスクしかないのでしょうか。

また自費診療になるためPGT-Aを勧められました。
可能性があるならしたい検査ですが、着床すらしない子宮にPGT-Aをした卵を戻しても意味があるのでしょうか。
この場合、子宮を整えるために何ができるでしょうか。

卵管造影検査はしたことがなく、子宮鏡で卵管口が少し狭いから閉塞してるかもと言われています。
しかし甲状腺が引っかかった今、造影剤検査はしたくないため、FT(卵管形成術)しかないと言われています。
卵管水腫があるとFT適応ではないとのことですが、水腫はエコーで確定診断でしょうか。MRIまでしなくても大丈夫なのでしょうか。

今後、体外受精であれば自費治療をしたいと考えていますが、検査はできることはしているからこのまま採卵移植を繰り返すしかないのか、他なにか検査などする必要がないのか、アドバイスいただけたら助かります。

稲垣先生にお話をおうかがいしました。

【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●甲状腺ホルモンTSHの数値が上昇していますが、これは不妊に影響しますか?

日本産婦人科医会HP(https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%884%EF%BC%89%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%A8%E5%A6%8A%E5%A8%A0/)によれば、依頼者のTSH値の場合は専門医に紹介することが方針の一つとなっています。前期のリンク先にもあるように甲状腺機能異常は生殖機能に影響するとされており、これまで精密検査や治療がなされていないならば、精査のうえ、状態に応じた対応がなされたほうがいいのではないかと思います。

●PGT-Aを行う価値は、着床しない現状でどれほどあるのでしょうか?

これまでの胚移植で移植された胚の染色体数はわからないわけですから、胚移植の不成功の原因として胚の不良の可能性は排除できません。PGT-Aを行った場合、100パーセントではありませんが少なくともPGT-Aにおいて染色体数の異常はないとされた胚を移植できることから、一定の意義はあると思います。

●卵管水腫の確定診断はエコーで十分でしょうか?MRIが必要ですか?

ある程度の拡張所見があれば超音波でも診断はできると思います。当院では子宮卵管造影検査も施行して診断しています。MRIの適応は限定的だと思います。

●自費治療を考えていますが、他に検討すべき検査や治療法はありますか?

甲状腺の状態から、許可が下り次第ですが、子宮卵管造影検査は一向に値すると思います。これは保険適応で実施できると思います。上述の卵管の評価のみならず子宮内腔の形状も把握できますし、造影剤によるいわゆる「通水」効果にも期待できます。そのほかに検討できるものとしては子宮内フローラなどがあるでしょうか。また男性因子の有無についても精査を検討してみるのもいいと思います。IVF-ETについても排卵誘発法の変更やc-IVF、ICSIがありますし、胚移植法も新鮮胚移植、融解胚移植、融解胚移植では排卵周期法とホルモン補充周期がありますが、それぞれについて検討してみてもいいのではないでしょうか。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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