【Q&A】PCOS、妊娠率を高める方法~浅田先生【医師監修】

エリーさん (34歳)

顕微授精を行っています。
1回の採卵で8個胚盤胞を凍結でき、グレードはA5つ、B3つ。自然周期でAグレードの卵を3回移植しましたが1回目は化学流産、2回目は稽留流産、3回目は陰性でした。残り胚盤胞が5個(A2つ、B3つ)。ひたすら移植していくしか方法はないでしょうか?
保険での移植を残しPGT-Aを実施しようと思っています。やはり妊娠しない原因は染色体異常でしょうか?それとも母体に原因がありますか?
なにか検査は必要でしょうか?
考えられる原因やいい方法があれば教えてください。

浅田先生に聞いてきました

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、岡崎、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

このデータを見ると、1番問題なのはAMH18ということで、2桁以上、それも20に近いAMHが極端に高い方です。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が非常に重症で、月経が不規則なのは当然といえます。

妊娠しない原因が染色体異常か、母体にあるかについて、妊娠しない原因は母体にはほとんどありません。受精卵を他人の子宮に移植しても代理出産が成立するように、母体では妊娠をコントロールしていません。母体は単に栄養を与える場所です。

着床においても、子宮の中でしか着床できないということはなく、子宮外妊娠があるのは、子宮でなくても妊娠が成立するということです。

多くの場合染色体異常が原因で流産になりますが、PGT-Aをすれば、流産となる染色体異常の受精卵を移植することがなくなります。PGT-Aで受精卵がよくなるわけではないですが、流産となる移植を省くことができるため、時間短縮に繋がり、移植あたりの妊娠率が上がります。
移植あたりの妊娠率を高める方法はPGT-Aしかない、と考えていただくとよいと思います。

移植のプロトコールとして、黄体ホルモンの投与開始と、受精卵の成長が一致しなければなりません。そのような治療をしている施設で治療することが大切で、自然周期の場合はそれがずれやすいため、不利になります。

必要のない検査や治療をし、費用を費やすことは最も避けるべきことです。

胚盤胞のガードナー分類であるグレードの話がありました。グレードと受精卵の中身である染色体異常とは必ずしも一致しません。グレードのよいものの方が染色体異常となる確率がやや低いという程度に受け止めてください。野球で打順を決めるようなもので、グレードは移植の順番を決める程度と考えてください。

あくまでも受精卵の中身が大切です。染色体異常がなくても、カップルの遺伝子の組み合わせで、受精卵は全て1個ずつ組み換わっているということを考えてください。妊娠率を1番に高める方法は、赤ちゃんまで育つ可能性のある成熟した受精卵を数多く用意することに尽きます。

PCOSの強い方は、未熟な卵子が多く採れます。成熟していない卵子では受精率が落ち、その後の胚盤胞到達率も下がり、妊娠率も下がります。
PCOSにおいても成熟卵を適切に採取でき、卵巣刺激を副作用なく行える、技術の高い施設で治療するのが近道です。

 

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