【Q&A】不妊治療で次に検討すべき検査~宇津宮先生【医師監修】

まほさん(32歳)
受診した際に排卵日を予測して貰ってタイミングを取りましたが、妊娠できませんでした。
今周期はレトロゾールを服用し、葉酸とコエンザイムQ10を服用しています。
基礎体温と併用して排卵検査薬を試すことを考えていますが、他に考えられる方法はありますか?

宇津宮先生に、お話しを聞いてきました。

【医師監修】セント・ルカ産婦人科 宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 9,500 件を超える。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

まず、まほさんは1年間検査、治療をしているにもかかわらず、精液やAMHが未検査ですので早く専門クリニックに転医するべきです。

さて、1回の排卵で妊娠する確率は18~35%と言われています。よって異常がないなら3~4回(約半年)以内には妊娠するはずです。

まほさんは、レトロゾールを使っているので、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でしょう。PCOSなら精子さえよければ、適当な治療法をすればきっと妊娠できます。
レトロゾールはアロマターゼ活性阻害剤です。これは、エストロゲン形成を少なくしますから、脳下垂体は「エストロゲンが少ないようだ」と理解し、FSHの分泌が増加し、そのおかげで卵巣では卵胞が成長します。ちなみにクロミッドは脳下垂体のエストロゲン受容体に蓋をするため「エストロゲンが少ないようだ」と誤解し、その結果、FSHの分泌を促すことになり、そのおかげで卵巣では卵胞が成長します。このようにレトロゾールもクロミッドもエストロゲンの作用に反する作用(抗エストロゲン)を利用して卵胞を刺激しているのです。

その反面、子宮頚管や子宮内膜にもエストロゲン受容体があり、エストロゲンにより粘液が増加したり、内膜が厚くなったりしますが、クロミッドやレトロゾールはその作用を阻害するので子宮頚管粘液が少なくなり、内膜の厚さも薄くなり(よって月経量は少なくなる)、妊娠率はあまり高くないという特徴があります。

妊娠を考えるならFSHの自己注射のほうが理にかなっています。しかしPCOSなら慎重にする必要(多胎妊娠、卵巣腫大など)がありますので不妊専門クリニックが良いと思います。

排卵検査薬はそれほど重要ではありません。むしろ、エコーでの検査が良いです。排卵検査薬はLHが分泌されたか否かを知るだけで、LHが分泌されても排卵はしていないこともありますから、それを併用し、エコーでも排卵の有無を検査すべきです。

葉酸は妊娠3ヵ月前から服用すべきです。日本人は葉酸吸収が少ない遺伝子を持つ人が15%おり、葉酸不足で神経系の先天異常(無脳児や脊椎分離など)がありますので妊娠希望者は必須です。コエンザイムQ10は活性酸素を阻害しますので卵子の質の向上に役立ちます。

まほさんは1年近く妊活していますので、そろそろ腹腔鏡検査をお勧めします。

すると、8~9割の方で外来検査で見つけられなかった不妊原因(子宮内膜症、卵管采の卵子ピックアップ障害、癒着など)が見つかります。その際、それらを治療しますので、腹腔鏡後3~4ヵ月以内に約4割が自然妊娠します。なるべく自然に近い妊娠を希望するなら腹腔鏡は体外受精(IVF)に進む前にすべき重要な検査と思います。

生活習慣は現在では十分満足いく環境にあると思います。しかし身体的・心理的ストレスは自己管理が必要です。ストレスは生殖機能に大きな影響を与えます。ご夫婦は毎日を楽しくゆっくりとできる工夫をしましょう。運動は汗をかくくらいを1~2時間、週に数回など、ゆっくり目で。精神的リラックスも重要です。二人で話し合って取り組んでみてください。

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