【Q&A】体外受精と顕微授精の選択基準~加藤 徹 先生【医師監修】

りんごさん (29歳)

8月に採卵を行いました。採卵数26個、成熟卵22個で10個を体外受精、12個を顕微授精にしました。
体外受精では10個中7個が受精、顕微授精では12個中8個が受精でした。
また、その後の培養で体外受精の3個と顕微授精の5個がDC胚でした。
終的に初期胚1つ、胚盤胞4つを移植できましたが、受精数が少ないことや、DC胚が多いことが気になっています。
この原因はなんでしょうか。また、次採卵が必要になった場合、どんなことに気をつけたら良いのでしょうか。

Kobaレディースクリニック 加藤 徹 先生にお聞きしました
【医師監修】Kobaレディースクリニック 加藤 徹 先生
兵庫医科大学大学院卒業後、兵庫医科大学病院周産期センター長や医局長を歴任し、令和4年よりkobaレディースクリニック副院長として従事。令和6年6月同院長就任予定。日本生殖医学会認定生殖医療専門医、指導医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

受精率が低い原因は?

採卵26個で成熟卵子が22個。
体外受精受精率 7/10=70%
顕微授精受精率 8/12=66.7%
上記の受精率に関してですが、体外受精に関しては低くないと考えます。顕微授精は若干低いように見えます。

そもそも臨床上100%の受精率が得られることの方が稀です。文献や、クリニックによっても差はありますが、体外受精なら70%前後、顕微授精なら85%前後が平均的でしょうか。当院でも同様です。そもそもの精子、卵子の質的な問題が受精率に大きく影響します。顕微授精は施設毎の技術的な問題で受精率が上下する可能性はあります。
今回の結果を見ると体外受精での受精率は正常だと考えられるので、そこまで問題は無いと考えます。

DC胚が多い原因は?

質問者さんの言う、DC胚が、Direct Cleavage(DC)胚の事を指しているとして回答します。
1個の割球が3個以上に分割したDC胚と正常分割胚の成績ですが、DC胚も最終的に良好形態胚盤胞になる事もあり、その場合は正常分割胚と同等の臨床成績が得られるという報告があります。当院でも最終的な形態が良好な胚は移植対象としており、成績も問題ありません。DC胚が多いというだけでは評価が難しいです。最終的に良好胚盤胞が出来ているかが重要と考えます。

体外受精と顕微授精の選択基準は?

これは採卵当日の精液所見によります。当院は精子濃度、運動率、SMI等を確認して、過去のデータと照らし合わせて、体外受精受精率が低下する基準を下回っていれば顕微授精に切り替えます。また、過去の体外受精成績で受精率が低い場合は次回は顕微授精を提案します。
今回の受精率結果を見る限り、体外受精の受精率は低くないため、以降は体外受精でいいと考えます。

胚盤胞の質を向上させる方法は?

受精卵の質を向上するためには、そもそもの精子、卵子の質を高める必要があります。当院ではサプリメント等でのアプローチを勧めています。ただ、受精卵を作る技術は施設間で異なってくる事も事実ですので、なかなか結果が出ない場合は転院を考えるのも一つです。
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