【Q&A】無月経でも妊娠できる?~田口早桐 先生【医師監修】

コムさん(28歳)

なぜ月経が来ないのか、今後可能性はあるのか、見立てをお聞きしたいです。

妊娠を希望していますが、今後どのような検査、治療を受けることになるのでしょうか?
スケジュール、費用も含めて教えていただけますと幸いです。

また、受診について、一般の産婦人科でよいかすぐに不妊専門の医療機関を受診したらよいかもご助言いただけると助かります。

オーク銀座レディースクリニックの田口早桐 先生にお伺いしました。

オーク銀座レディースクリニック 田口早桐 先生
川崎医科大学卒業、兵庫医科大学大学院修了。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、大阪・東京で展開する医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたっている。近著に、「ポジティブ妊活7つのルール」(主婦の友社)がある。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

●月経が来ない原因について

現在の無月経の主な原因は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による排卵障害と考えられます。もともと卵胞が育ちにくく排卵が起きにくい体質です。また、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が4.38とやや高めである点も妊娠に影響する可能性があり、妊娠希望がある方では2.5未満に管理することが望まれます。

●月経不順が妊娠に与える影響と今後の妊娠の可能性

排卵が起こらない状態では自然妊娠は難しいですが、PCOSは治療で排卵を促せる病気です。28歳という年齢は卵巣機能がまだ保たれている時期であり、適切に治療を進めれば妊娠の可能性は十分にあります。

●妊娠を希望する場合の検査や治療

妊娠を目指すための基本的な検査は、ホルモン検査・卵管疎通性検査・精液検査です。
治療は段階的に進めます。

(1)排卵誘発剤(クロミフェンやレトロゾールなど)で排卵を起こす
(2)タイミング法(排卵日に合わせて性交)
(3)効果がなければ人工授精(AIH)
(4)必要に応じて体外受精(IVF)加えて、外科的治療(卵巣ドリリング) という選択肢もあります。卵巣に小さな穴を開けて排卵を促す方法で、一部のPCOSの方に有効な場合があります。ただし効果には個人差があり、手術による侵襲(身体への負担)もあるため、最初から選ぶ必要はありません。まずは薬による治療を行い、効果が乏しい場合に選択肢となります。
また、TSHが高めの場合は甲状腺ホルモン剤で補充し、妊娠前からTSH 2.5未満を目標に管理します。

●検査や治療のスケジュールと費用

・初期検査:1〜2か月、保険診療で数千円〜数万円程度
・排卵誘発+タイミング法:1周期あたり 数千円〜1万円台
・人工授精:1回 1〜3万円程度
・体外受精:1回 20〜50万円程度(保険適用あり、助成制度も利用可)

●受診すべき医療機関について

一般の産婦人科でも基本的な排卵誘発は可能ですが、妊娠を希望されていることや甲状腺機能の管理が必要なことを考えると、不妊専門クリニックの受診を早めに検討されるのがおすすめです。

●まとめ

・無月経はPCOSによる排卵障害が主因。
・TSH高値も妊娠に影響し得るため、補充療法で2.5未満を目標に。
・検査はホルモン・卵管・精子の3本柱。
・治療は排卵誘発剤から段階的に、必要に応じ人工授精や体外受精。
・卵巣ドリリングなど外科的治療もあるが、侵襲があり最初から選択しなくてもよい。
・妊娠の可能性は十分あり、効率よく妊娠を目指すには不妊専門医の受診がおすすめ。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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