【Q&A】A判定胚なのに着床しない~稲垣先生【医師監修】

ぽんさん(38歳)

遺伝子検査問題なしですが、胚盤胞移植で3回連続着床しませんでした。「卵の問題ではなく、子宮の問題の割合が高いと考える」で良いでしょうか?その場合、何ができるでしょうか?(検査やサプリなど)。
EMMA/ALICE検査はしていませんが、おすすめのサプリはありますでしょうか。
CD138で内服した抗生剤の影響で子宮環境や着床の窓の変化は考えられますか?

移植前の、排卵誘発時(LHトリガー使用時)のホルモン値の基準と、移植日当日のホルモン値の基準を教えていただきたいです。

PとE2値自然周期ですが、P値が高すぎる気がするのですが(30以上です。第一子の時は27とかでした。)
E2値は100以下のときも移植しました。低いでしょうか?

移植日が遅すぎるということなどありますでしょうか?
卵胞は25mmとか育ってきているけれど採血結果が出るのが翌日とかになってしまい、卵胞確認日にトリガーできていません。

このまま採卵、移植を繰り返すしかないとわかっていますし、繰り返す予定です。
ですが、自分のことを知るためと他の病院の成績としてはどうか知りたく、質問させてもらいました。

稲垣先生にお話をおうかがいしました。

【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●ぽんさんが3回の胚盤胞移植で着床しなかった原因が「卵の問題ではなく、子宮の問題である可能性が高い」という考え方について、先生はどのようにお考えでしょうか?

相談文に「染色体異常なしの胚盤胞移植」とあります。PGT-Aのことを指すのかと思いますが、PGT-AでA判定だった胚盤胞の妊娠率はおよそ60~70%といわれています。染色体数に異常のない受精卵を胚移植ているのであればこのくらいの妊娠率ですので、受精卵以外の要因による不成功と考えるのはおおむね妥当と思います。

●EMMA/ALICE検査をまだ行っていないぽんさんに対し、先生がおすすめするサプリメントはありますか?

CD138陽性の記載がありましたので、ラクトフェリンをお勧めします。

●CD138で内服した抗生剤が子宮環境や着床の窓に影響を与える可能性はありますか?

ERA検査(賛否両論あるようですが)の場合、慢性子宮内膜炎の治療や子宮内フローラに変化があった場合着床の窓にも変化が起こりうるといわれているようです。このため可能性としては抗生物質の内服による子宮内環境の変化に伴い様々な条件が変わっている可能性は否定できないのではないでしょうか。

●排卵誘発時( LHトリガー使用時)と移植日当日のホルモン値の基準について教えてください。

当院ではホルモン補充療法での凍結融解胚移植を行っており、相談者さんの場合と事情が異なるかもしれません。当院での黄体化直前のE2基準値は150pg/mL以上かつP4が1.0ng/mL未満です。(自然)排卵周期で行う場合はE2が300以上(目安)、P4が1.0未満でしょうか。

●自然周期でのP値が高い(30以上)と感じていますが、その数値は問題があると考えられますか?また、E2値が100以下の場合、その数値は低いと考えられますか?

その程度のP4は問題ないと思います。P4は日内変動もありますので、ある程度の値が出ていたほうがいいと思います。E2値100以下は低いと思います。上記(前項)の通りです。

●「卵胞が25mmまで育っているにも関わらず採血結果が翌日になってしまい、卵胞確認日にトリガーができない状況」ですが、移植日が遅すぎるということは考えられますか?

ホルモン値の報告が当日でない場合はやはり移植日の精度を出すのは困難だと思います。一概に遅いといえるというわけではありませんが、やはりリアルタイムで情報が得られたほうが制度は高まるのではないでしょうか。

●ぽんさんの現在の状況とこれまでの経過を踏まえて、先生の病院での成績と比較してどのように評価されますか?ぽんさんの現在の状況とこれまでの経過を踏まえて、先生の病院での成績と比較してどのように評価されますか?

当院でのPGT-AのA判定受精卵の胚移植の妊娠率は約80%です。一般の胚盤胞移植の妊娠率は2024年のデータで50.2%でした。だから相談者さんが現在通院されている施設に対する評価を行うこととは全く別だと思います。通院されている患者さんの背景(初診から通院されている方が多いとか、他院から転院されてこられる治療困難なケースを多く診られている施設である場合などもあるともいます)や診療スケールの違いなどもあると思います。いただいた情報から判断させてもらうと、ERA検査やEMMA/ALICE(子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎)検査等もされていられないということですので、原因検索の幅を広げることも考慮されてみてもいいかもしれません

 

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