さくらさん(37歳)
移植1回目・2回目にそれぞれ4ABを移植しましたが、陰性。
移植3回目で3ABを2個移植して陽性(移植9日目でHCG129.5)なるも、胎嚢確認できず、化学流産。
凍結胚も無くなり、転居に伴い、新しい病院で採卵を行って10個確保しました。
次周期に移植周期に入るのですが、3つ質問があります。
①2個移植にするべきでしょうか。
②2個移植するなら、組み合わせは4AA×2が良いでしょうか。それとも、二人目も希望するので4AAとグレードの低い物が良いでしょうか。
③内膜が厚くなりにくい&移植周期になるとE2が上がりにくい傾向があります。何かサプリや対策はありますか?
スクラッチ、シート法は過去に実施済みで、今の病院ではやられてないそうです。
どうぞ宜しくお願い致します。
小川誠司先生に教えていただきました。
藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●さくらさんの状況を考慮に入れた上で、次の周期での移植は1個または2個のどちらが適切でしょうか?
今回新たに採卵された胚であり、グレードも前回よりも良いAAグレード胚がありますので、双胎になるリスクを考えますと、再度1個移植を行うことをお勧めします。
ただ、これまで3回移植不成功であり、年齢から考えても、胚以外の着床不全の要因が関与している可能性も否定できません。そのため、移植へ進む前に、子宮鏡検査だけでなく、自己抗体や凝固因子検査、甲状腺ホルモンや慢性子宮内膜炎検査、「着床の窓」を調べるERA検査、子宮内細菌叢を調べるEMMA/ALICE、免疫検査(Th1/2比)などの着床不全検査を一通り実施されることをお勧めします。
●2個移植する場合、胚のグレードに基づいた最適な組み合わせは何でしょうか?また、 4AA×2が良いか、または二人目も希望しているために4AAとグレードの低いものが良いかについて先生の意見をお聞かせください。
一般的に、良いグレード胚と悪いグレード胚を組み合わせても、妊娠率の向上にあまり寄与しないと言われています。そのため、今回の凍結胚においては、AAとACのような質に差のある組み合わせはお勧めしません。双胎リスクを抑えるという観点から、AA胚2個ではなく、AAとAB、またはAAとBBのように、比較的近いグレード胚での組合せをお勧めします。
また上記に記載の着床不全検査をすべて実施し、異常が見つからなかった場合には、胚の質以外の問題がなかったと判断できるため、2個移植を検討すると良いかもしれません。一方、検査で何らかの異常が見つかった場合には、それがこれまでの不成功の要因である可能性が高く、その場合は再度1個移植をお勧めします。

●内膜が厚くなりにくく、移植周期になると E2が上がりにくい傾向に対するサプリメントや対策は何かありますか?
エストロゲン製剤は、その剤型によって、体内への吸収率が異なりますので、異なる剤型(テープ、ジェル、内服薬など)の薬剤を組み合わせて用いることが有効だと思います。
内膜を厚くする効果のあるサプリメントとしては、すでに飲んでいらっしゃるアルギニンに加えて、ビタミンEやバイアグラの膣内挿入(適応外使用)、ペントキシフィリンなどがあります。あるいは、ホルモン補充ではなく、自然周期(排卵周期)移植の方が、内膜が厚くなりやすい方がいらっしゃいます。ただ、さくらさんがPCOSで排卵障害があるようでしたら、レトロゾールなどを用いた低刺激周期での移植を考慮しても良いかもしれません。
●現在の病院ではスクラッチやシート法を実施していないそうですが、これらの方法を再試行することを検討すべきでしょうか?
化学流産の原因は、胚の染色体異常であることが多いとされています。もし3回目の移植が胚の異常によるものであったとすれば、正常胚であれば、しっかりと着床し、妊娠継続できていた可能性があると思います。したがって、3回目の移植の際に、スクラッチやSEETを実施されていたのであれば、過去の成功パターンを再現するように、今回も実施して移植されることをお勧めします。
今回のAAグレード胚は、これまでのAB胚に比べて格段に高い妊娠率が期待できる胚です。ぜひ前向きに、上記の点を参考にしながら、移植に進んでいただければと思います。