【Q&A】左卵管水腫。切除が良い?~藤野 祐司先生【医師監修】

ナギさん (40歳)
現在、左卵管水腫の可能性が高く、卵管切除の手術を控えていますが、切除が一番いい選択なのでしょうか。

手術後すぐに治療に臨めない可能性が高いため、難しいと承知していますが自然妊娠の可能性も残しておきたいです。
私の場合は水腫がエコーで映っていないので、本当に水が溜まって子宮に逆流しているかは不透明です。
エコーで映っている場合、移植前に水を抜く手術をして移植に臨むという例も拝見し、卵管を切除せず対応する例も見ました。

藤野 先生に聞いてみました。

【医師監修】ウィメンズクリニック本町  藤野 祐司 先生
大阪市立大学医学部卒業。藤野婦人科クリニックの院長を務めた後、平成28年にウィメンズクリニック本町を開院。
ご夫婦・ご家族の“夢”の実現に向かって、希望を叶えられるよう、患者さんの状況に合わせた診療を提供することを大切にしている。
日本産婦人科学会専門医、生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●ナギさんの現在の状況を考慮に入れて、左卵管水腫の診断は確定的なものだと考えられますか?

左卵管水腫:卵管造影での診断ですから「卵管水腫」は確定診断だと思います。チョコレート嚢腫との診断を受けているので、子宮内膜症による癒着が卵管水腫の原因かと考えます。複数回の胚移植でも妊娠しない原因として卵管水腫が考えられますので卵管切除は治療方法として有効だと判断します。

卵管切除の手術はナギさんの症状や状況に対して最適な治療方法と言えますか? それとも他に適切な治療方法はありますか?

今後の自然妊娠の可能性に関してですが、子宮内膜症による広範な骨盤内癒着(卵管癒着・卵巣癒着)が想定されますので左卵管切除の如何に関わらず自然妊娠には困難が伴うことが想像されます。

●「自然妊娠の可能性を残したい」とのことですが、卵管切除手術後の自然妊娠の可能性はどの程度あるのでしょうか?

エコーで卵管水腫が確認できないとの事ですが、左側は通常でも腸管やガスなどが影響し超音波での卵巣・卵管の確認が異常に困難な例を多く経験します。

●エコーで水腫が映っていないとのことですが、これはどのような意味をもつのでしょうか? また、この場合でも、水が溜まって子宮に逆流している可能性はあるのでしょうか?

卵管水腫内容の吸引除去は一つの方法ですが、水腫の原因が子宮内膜症であれば水腫の内容が“チョコレート様”の粘稠な血液成分等である可能性も考えられ、簡単に吸引できるかどうかは不明です。

●移植前に水を抜く手術をして移植に臨むという選択肢について、ナギさんの状況では可能でしょうか? また、その場合のリスクや成功率について教えてください。

右チョコレート嚢腫の手術治療もお考えとの事ですが、AMHが0.5と低いことを考えますと術後の卵巣機能低下、残存卵子数減少が想定されます。手術前に採卵を行うことも考えられますが、保険診療では凍結胚を残したまま新たな採卵を実施することが出来ません。担当医と十分なご相談をされることをお勧めいたします。

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