【Q&A】抗セントロメア抗体、専門院に転院すべき?~藤本先生【医師監修】

4405さん(40歳)

体外受精前の検査は特に問題なく、保険診療での採卵で1回目は10個中7個が成熟卵。
そのうち5個が異常受精で、残りは2段階目で細胞分裂が止まってしまいました。抗体検査をしたところ、抗セントロメア抗体が330と高いとのことでした。

次はプレドニンを飲みながらの採卵をしてみましょう、とのことで、同じく保険診療内での誘発法(レコベル、デュファストン、レトロゾール)で2回目の採卵に進みました。プレドニンは採卵2週間前から飲み始めました。

2回目は14個中10個が成熟卵。顕微授精、P-ICSI、Caイオンフォア、タイムラブスを行ってもらいましたが、8個が異常受精、2個は正常受精でしたが同じく2段階目で止まっていました。

現在の主治医からは膠原病内科を紹介していただいたのですが、抗セントロメア抗体専門の病院へ転院した方が良いのか、このまま同じところで膠原病内科と連携とっていただいて続けた方が良いのか迷っています。

【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

はじめに結論から話すと、抗セントロメア抗体陽性の方に明確に効果のある治療法は現時点ではありません。ということになります。

抗セントロメア抗体は自己抗体で、自分の体が自分の体の一部に対して作ってしまった抗体です。この抗体を持っていると様々な症状や、膠原病(自己免疫疾患)になります。自己抗体は多種多様な種類があり、その種類によってさまざまな種類の膠原病をきたします。
抗セントロメア抗体は自己抗体の中の抗核抗体(自己の核を抗原してできた抗体)の一つです。いくつかの疾患やそれに伴う症状を呈することになるのですが、その中のひとつとして、正常な核分裂を阻害するというものがあります。抗セントロメア抗体に関する世界の論文を見てみると、この抗体を持っていると、卵子成熟率、正常受精率、胚発生が低下するというのが一致した見解です。
一方で、それに対する明確な対策(治療法)は明らかになっていないというのが現状です。一部の先生はプレドニンや免疫グロブリンによる治療を行っている先生もいますが、効果が出ているという明確なデータは示されていません。

そして、抗セントロメア抗体は抗体価が高いほど、より卵子成熟率、正常受精率、胚発生が低下すると言われています。ただし、ゼロになるわけではありません。そのため、率が低いなら少しでも多くの卵子採取できる排卵誘発行うことで、仮に低い成熟率、正常受精率、胚発生などがあっても、それらの低い確率をくぐりぬけて先に進むことのできた胚がひとつでもあれば、妊娠の可能性がでてくることになります。そうすることで妊娠に至っている患者さんもいます。

4405さんとしたら、途中で成長が止まってしまう状況を何とかしたいと思っていると思います。しかし、抗セントロメア抗体をもっているということであれば、どうしても成熟率、受精率は低下してしまいます。そして現状ではそれを改善できる明確な方法はありません。拝見すると、成熟卵率は問題なく、受精率は低いものの、いくつかは受精をしている状況ですので、このまま排卵誘発で少しでも多くの卵子を育てる方法で治療を進めていくことで妊娠できる可能性はあるのではないかと考えます。

転院も考えているとのことですが、他の病院で根拠のある新しい治療法は出てこない現状ですので、今の病院が自然周期で少数の卵子を育てる方法をメインで行っている病院でないなら、今の病院の治療で問題ないかと考えます。しかし、気持ち的になかなか打破できない状況の中、心機一転新しい病院に通うことで、4405さんも頑張れるということであるなら、転院も選択肢の一つといえるかもしれません。

以上お返事をさせていただきました。何か新しい知見を提示できればよかったのですが、、、そうすることが出来ずすいません。しかし、今の4405さんの現状を見ると、ぼくとしては4405さんはやるべきことをやっているのではないかと思いました。自分の進んでいる道を信じて頑張ってください。

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