nさん(26歳)10代から
多嚢胞性卵巣で、内服で月経を起こしています。
私のような場合、体外受精ではないと妊娠は望めないでしょうか?一日でも早く妊娠したいというよりは、子どもができにくい体質であることを自覚し、早めに治療に取り組んでいます。
体外受精も将来的に視野に入れていますが、できれば自然に近い形で楽しみながら妊活したい思いです。排卵誘発+タイミング法の2周期目で主治医の先生から体外受精を勧められて、思っていたよりステップアップが早くて驚いています。
エストロゲンが低いことや、子宮内膜が薄いままであることの治療はしなくて良いのだろうかと疑問に思っています。
【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●nさんのような多嚢胞性卵巣の状態でも、体外受精以外の方法で妊娠を望むことは可能でしょうか?
この質問にお答えするには情報が少ないです。不妊の因子を一通り調べないとどの治療法から取り組むべきかわからないからです。たとえば子宮卵管造影検査や精液検査などです。それらの結果から判断すべきだと考えます。
●現時点では排卵誘発とタイミング法を試して2周期が経過していますが、この早いうちから体外受精を勧められる理由としてどのようなことが考えられますか?
おそらく前の周期の排卵誘発で多数の卵胞が発育したからだと思います。タイミング法や人工授精では受胎数の調節ができません。一方体外受精においては、胚移植の際に移植する胚は1つ(または2まで)となっており、基本的には多胎妊娠となるとしても双胎(理論的には)までとなります。おそらく多胎妊娠のリスクを避けるためと推測します。
●エストロゲンが低い状態や子宮内膜が薄い状態について、これら妊娠にどのような影響を及ぼしますか?エストロゲンの低下や子宮内膜の薄さを改善するための治療法はありますか?
レトロゾール(=フェマーラ;商品名)は、そもそもがエストロゲンの生成を抑制する目的で開発された薬剤です。このためレトロゾールは長い間乳がんの治療薬としての適応となっており、その排卵誘発作用は(副作用として)知られていたものの、適応外使用となっていましたが、体外受精の保険適応化の際に適応症の拡大がなされ、広く(保険下で)処方されるようになった経緯があります。したがって今回のエストロゲン値の低下はレトロゾールの内服によるものと考えられます。
服用量も5.0mg/日と上限量となっており、抗エストロゲン作用が強く発現していることが強く推測されます。
しかしながらエストロゲンが低下することによりそのネガティブフィードバックが抑制されることにより卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が促されることによって排卵誘発作用がもたらされることになります。エストロゲンは低下しますが、子宮内膜の菲薄化はむしろクロミフェン(クロミッド)よりマイルドであるとされています。
まずは(レトロゾール)用量の見直しが検討されるべきではないでしょうか。もしくはhMGやFSH製剤による直接的な卵巣刺激法も検討されます。
ただし、AMHが高いようですので、その用量の設定には細心の注意が必要です。