【Q&A】20代、不妊検査はした方がいい?~佐藤幸保先生【医師監修】

のなのなさん(29歳)

投薬治療を受けながら、タイミング法をして3期目です。
先生からは「半年して難しければ体外受精などステップアップも含めて、転院することを検討する」と聞いています。焦ってはいけないと思うものの、残りの期間もあるのでこのままでよいか不安です。
一度妊娠した経験があるので、精液検査や卵管の検査はしていません。こういった検査はした方がいいのでしょうか?
先生にも相談した方がいいでしょうか?

また今は正社員で勤務しています。
なかなか近隣に不妊治療をしているクリニックがなく、今も1時間かけて通っている状態です。今後、ステップアップしたときにどれぐらいの通院が必要になるのでしょうか?仕事との両立ができるのか、金銭的な負担ができるのか、不安でいっぱいです。

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保 先生
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

一度妊娠した経験があるため、精液検査や卵管の検査は行っていないとのことですが、これらの検査を行うことで不妊治療の進行にどのような影響がありますか?

流産後に妊活を再開してから半年間たっていなければ、不妊症かどうかはわかりませんので、精液検査や卵管検査をする必要はないと思います。タイミング療法を半年間行っても妊娠しなければ、主治医の先生のおっしゃるとおり、不妊専門クリニックに転院したほうがよいでしょう。転院先でステップアップ、一通りの不妊検査を行うことをお勧めします。

のなのなさんが体外受精などのステップアップ治療に進む場合、どの程度の通院頻度が予想されますか?

人工授精の場合は、1ヶ月(1つの月経周期)に3-4回の外来通院が必要となります。体外受精の採卵では、一般に排卵誘発に連日の注射が必要になります。自己注射も可能ですが、病院で注射する場合は、1-2週間毎日外来通院する必要があります。多数の卵子が採取でき
た方では全胚凍結(胚盤胞まで達した形態良好の受精卵のみを凍結)するのが現在の主流です。全胚凍結の場合は、新鮮胚移植はしませんので、症状がなければ採卵後、次の月経開始までの外来通院は1回程度ですむでしょう。

体外受精の融解胚移植は、ホルモン補充周期で行う場合と排卵周期で行う場合があります。一般に日程調整のつきやすいホルモン補充周期を行うクリニックが多いように思います。ホルモン補充周期の場合、1つの胚移植周期(月経開始〜妊娠判定)に5回程度の外来通院が必要となります、排卵周期の場合は、それ以上が必要となることが多いです。

のなのなさんが来年度の仕事についての意向調査を控えていることを考慮に入れて、先生でしたらどのような不妊治療の進め方を提案されますか?

排卵誘発剤(クロミッドあるいはレトロゾール)を併用してタイミング指導6周期、その後人工授精6周期、それでも妊娠しなければ体外受精に進むことをお勧めします。

正社員として勤務しながら不妊治療を進行する上で、仕事との両立や金銭的な負担について不安を感じていますが、このような状況を考慮した上でアドバイスをお願いします。

令和4年4月から人工授精、体外受精いずれも保険適用となりました。年収に応じて高額医療制度もありますので、保険適用前に比べて金銭的な負担は軽減しています。社会的支援としては、令和4年4月に厚生労働省が「不妊治療と仕事との両立がしやすい環境整備に取り組む企業を認定する制度」を開始し、これに認定されている企業であれば、不妊治療のための休業はとりやすいと思います。

夜診のある不妊専門クリニックも多くありますので、それを利用することで休業を最小限におさえることができるでしょう。ただこのような状況でも、不妊治療と仕事の両立をしている女性のほとんでが「両立は困難」と考えているようです。

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