2回顕微授精を行い、PPOS 法(黄体ホルモン併用卵巣刺激法)を採用しましたが、E2 の値が高いのに十分な数の卵子が採れません。1 回目はレコベル ®とフェマーラ®、デュファストン®を使用し、E2 は 4000pg/ml 近く。卵胞は 40 個見えましたが 11 個の卵子しか採れず、胚盤胞になったのは1 個のみ。移植しましたが陰性で転院。2 回目はゴナールエフ ®、クロミッド ®、フェマーラ ®を使用し、E2 は 3500pg/ml。卵胞は 15 個で採れた卵子は 2 個、胚盤胞は0 でショックでした。良い方法があれば知りたいです。
2回の採卵とも十分な卵子が採れなかったということですが、先生の所見はいかがでしょうか。
最初の採卵前には卵胞が40個も見えていたそうです。
生田先生●それほどの数になるのはだいたいPCOSの方です。PCOSの方の場合は排卵誘発剤の反応の出方が異なり、卵胞の数が徐々に増えていくのではなくて、あるところで突然ブワッと増えるのが特徴です。1回目の時は、おそらくそれでE2の値が一気に上がったので採卵の予定を繰り上げたのだと思いますが、早めにオビドレル®(HCG製剤の1つ)に切り替えたので、まだ卵胞が小さかったのだと思います。それでうまく採卵できなかったのと、採れた卵子も未成熟だったので受精も期待どおりにはいかなかったのではないでしょうか。
胚盤胞1個は移植できたけれど、胚盤胞を戻した場合の妊娠率でも50%ですから、残念ながら妊娠に至らなかったわけですね。小さな卵巣の中に40個もの卵胞が押し合いへし合いしていたわけなので、卵子の質もあまり良くなかったのではないかな、と思います。
生田先生でしたらどのように対処されますか?
生田先生●卵胞が40個まで増えてしまった場合、コースティング(卵巣過剰刺激症候群になるリスクを回避するため、一時的にHMGの注射を中止して排卵を抑制した状態を数日間維持し、ホルモン値が低下するのを待って採卵する)という方法もあります。ですが、長くコースティングすると回収卵子がかなり減るので、一旦治療を止めて、もう少し刺激を軽くして改めて採卵するのがよいと思います。
転院後の医師は、1回目の経緯をみて通常は150単位で打つゴナールエフ®を少なめの100単位にしたんですね。それで1回目ほどE2の数値は上がらず3500pg/mlくらいで、15個ほどの卵胞が見えていて、実際に採れた卵子は2個だったということが考えられます。
あまり採卵できなかったのは、オビドレル®を注射してから採卵までの時間が少し短かったか、自己注射であるオビドレル®を正しく打てていなかったからか、卵胞が意外と小さめで切り替えたためなのか、そのあたりも気になります。
HCG製剤が卵胞までたどり着くと、卵胞の中の顆粒膜細胞が卵丘細胞にヒアルロン酸をつくらせて細胞間の間が広がり、内側の壁にくっついている卵子がメリメリと剥がれます。そこで卵子がヒアルロン酸の粘液に包まれたまま浮き上がってくることで採卵できるので、もう少し時間があればうまく浮き上がってきたのではないかな、と。
採卵のタイミングが少し早かった可能性があるわけですね。
生田先生●オビドレル®が十分に作用するまで若干、時間がかかっているのかもしれません。通常はHCGのお薬を注射してから採卵までの時間は36時間くらいですが、それをたとえば、1時間くらい長くしてみるとか。あまり長くすると排卵してしまい、採卵できなくなりますから、そうならないよう、少しだけ時間稼ぎをしてみるといいかもしれません。
反応に時間がかかる場合、HCGのお薬の量を増やしてみることもありますが、PCOSの方は卵巣が腫れる危険性があるので、難しいですね。
使用する薬剤で、工夫することなどはありますか?
生田先生●採卵については薬剤の選択というより、HCGの注射をしてからのインターバルが一番の問題ですが、PCOSの方の排卵誘発剤は、クロミッド®よりもE2があまり上がらないフェマーラ®を使うほうがいいと思います。
PCOSの方の卵胞刺激は難しいので、とにかくインターバルの置き方を少しずつ変えて何度か試してみる。個人差もあるので、ssさんに適した時間を探し出して採卵していくしかないと思います。
刺激によって卵胞がどんな感じで膨らんでくるかが問題なので、医師がそこをよく見極めて、頑張ってタイミングを見計らっていけば、当院でもだいたいの方が妊娠することができていますよ。