PCOS治療の選択肢、クロミッド®とレトロゾールどちらが最適解?

相談者 :ゆっちさん(28歳)
中学時代に拒食症による無月経が半年ありました。現在は月経不順で通い始めたクリニックでPCOS(多囊胞性卵巣症候群)と診断され、クロミッド®を内服しています。Day3 でのホルモン検査ではLH:1.11mlU/ml、FSH:5.21mlU/ml、PRL:8.84ng/ml、E2:6.1pg/ml、P4:0.06 ng/ml でした。黄体機能不全かもしれないと思い、現在2 周期目ですが着床できるか不安です。3周期試してダメなら、ステップアップしたほうがいいでしょうか。レトロゾールのほうが合っていますか?
厚仁病院 生殖医療部門 松山 毅彦 先生
東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、1996 年厚仁病院産婦人科を開設。厚仁病院理事長。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会生殖医療専門医。

現在のクロミッド®単独での使用は最適な選択でしょうか。黄体機能不全の心配もされています。

松山先生● Day3の検査結果しかないので、黄体機能不全かどうか判断がつかないのですが、おおよその場合、クロミッド®を使っていれば高温期が安定するので、最初にクロミッド®を使って何周期か様子を見るというのはスタンダードな選択だと思います。5周期ほど試してからステップアップする場合もあります。

ステップアップする場合、注射ではなくレトロゾールは考えられますか。

松山先生●レトロゾールは選択肢としてあると思います。近年の指針では、レトロゾールは比較的初期段階で使えるようになりましたし、保険適用もされて使いやすい薬になりました。ただ、クロミッド®とレトロゾールはそれぞれ得手・不得手があるので、そこを理解して慎重に選ぶ必要があります。

クロミッド®は、効き目が強いので排卵しやすいのですが、頸管粘液が減ったり、子宮内膜が厚くなりにくい点がデメリットです。 逆にレトロゾールは、排卵させる力は弱いのですが、うまく排卵できれば頸管粘液に影響を及ぼさず、子宮内膜も厚くなりやすいです。より効率よく排卵し、妊娠しやすい環境を作るためには、卵巣の状態に合わせて選択していく必要があります。

過去の拒食症と無月経が、現在の下垂体のホルモン分泌に影響を及ぼしているのでしょうか。

松山先生●過去の無月経は関係ないと思いますが、その原因が拒食症ということは、現在も少食なのではと推測します。ゆっちさんの場合、身長152cmで44kgと少し痩せぎみなので、妊娠しやすい環境とは言えません。妊娠から出産までは十分な体力が必要です。肥満は良くありませんが、ほどよい食事と運動を心がけ、もう少し体重を増やすよう意識してみてください。

現在は、不妊治療専門ではなく、月経不順の治療で通っているクリニックで治療を受けているようですが、もし転院するなら、不妊治療の専門クリニックがよいでしょう。また、男性不妊に対応できるクリニックも増えています。ゆっちさんの場合、ご主人の精子の運動率が35%と若干低めに出ています。ご主人が協力的な方なら男性不妊にも対応している専門クリニックに一緒に受診してみると不安要素は減らせると思います。

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