【Q&A】中期中絶後の治療再開は?~川越先生【医師監修】

りんごさん(39歳)

6月末に保険診療5回目の凍結胚移植を行い、妊娠に至りました。
途中何度か性器出血があったり、子宮筋腫がかなり痛むことがあり、点滴やカロナールを飲んで様子を見ていました。19週目にも出血があり、子宮頚管から胎胞が脱出してしまっていて、頚管無力症と診断、そのまま中期中絶となってしまいました。精神的にとても辛い出来事でした。
次妊娠できた時は頚管をしばる手術を早めにすることを提案されました。
「2、3回月経を見送ったら妊娠して良い」と主治医に言われましたが、中期中絶後、いつ頃から不妊治療を再開すると良いでしょうか?また一から全ての検査をすることになるのでしょうか?
もともと月経が不順なので、月経がいつ来るかもわかりません(現在は悪露があります)。
もう39歳なので、なるべく早めに採卵、胚移植をしたいと考えています。

山形大手町ARTクリニックの川越先生に聞いてきました。

【医師監修】山形大手町ARTクリニック川越医院 川越 淳 先生
山形大学医学部医学科卒業。同大学院医学系研究科医学専攻修了。ベイラー医科大学分子細胞生物学分野にて研究。山形大学医学部産婦人科学教室にて助教、講師を経て、川越医院の院長に。大学院時代から一貫して、女性ホルモンの受容体を介した生体に与える影響について研究。アメリカ滞在中は、女性ホルモン受容体の作用を調節する因子の研究を行う。研究成果の1つは、基礎生命研究分野のトップジャーナルに報告。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

努力を重ねた上での妊娠だっただけに、今回の流産に至った経過は胸が潰れる思いだっただろうと、私たちも悲しみを共にするものです。ただ、慰めにはならないかもしれませんが、不妊治療を行う立場のものとしては、「妊娠できる」ということは確かなことですので、再度これまでの治療の経験を踏まえて治療を進めることで、この悲しみを乗り越えられるのではないかと期待いたします。

流産後、不妊治療を再開するまでの期間についてはさまざまな意見があり、絶対的な基準があるわけではありません。私たちの施設では、少なくとも1回は月経が回復すること、(胚移植や一般不妊治療では)内膜発育の回復に問題がないこと、ご本人が治療に対して前向きであること、をもって不妊治療周期を再開することとしており、長い待機期間は設けておりません。

凍結胚獲得後の胚移植を試みられる場合には、その治療期間中には採卵周期を含めると月経2~3周期分の時間経過が得られるはずですので、その間に子宮の回復を待つと共に内膜発育に関して何回かの経過確認を行えるものと考えます。りんごさんの場合は、19週での後期流産に至っており、いわゆる流産としては子宮に負担がかかっているため、月経2〜3周期は様子を見たいという一般的な気持ちは私もよく理解しますが、ご自身が治療への早期の復帰を希望される場合には、上述の通り治療しながら回復を待つことも可能と考えます。

治療を再開する際には、ご自身の子宮や卵巣機能について、ある程度の検査は必要と考えます。
治療施設を変える場合には、卵巣機能に関する検査、手術実施にあたって必要な術前検査、ご夫婦の感染症検査、男性の精液検査は最低限評価が必要と考えます。施設によっては子宮内の状態確認を検討することもあります。安全にかつ適切な内容での治療を実施するために、出来るだけ古くないデータを基に治療を行うためです。

また、甲状腺機能低下症についても不妊治療施設での状態把握を実施しておくことが必要と考えます。先進医療や自費診療で行ったTRIO検査、フローラ検査、子宮内膜炎の検査とその後に行なった治療経過の詳細、Th1/Th2測定検査に関しては、その詳細を持参いただくか診療情報提供書を用意していただく必要があります。高額な検査に関しては、直ちに再検査は必要ないと考えますが、経過に合わせて相談を進める必要があります。

受診のタイミングですが、月経の回復を待って受診されるのが最適ではありますが、月経不順があり、かつ分娩後となると、いつまで待つと良いのかは見通しが立てにくい状況です。一般的には流産後は1ヶ月ほどで月経回復を期待できるのですが、それよりも待機期間が長くなる可能性が予想されます。待機することで気持ちが焦って不安になるようであれば、流産から1ヶ月程度の時期を目安に一度状況把握も兼ねて相談のための受診をされてみてはいかがでしょうか。

頚管無力症は、事前に予期することが大変難しく、悲劇的な経過を経ることのあるものですが、次回妊娠以降は対応しうるものです。その手術として頚管縫縮術がありますが、妊娠成立して、いわゆる安定期に入る14週以降から対応を検討・実施するもので、産科の先生と相談いただくことになります。

不妊治療を行う立場からは、まずは妊娠成立を目指すことを優先して治療に取り組めると考えます。生殖補助医療に関わる治療回数制限については、治療にて妊娠成立し妊娠12週以降まで経過した場合には、改めて初回からの治療開始の取り扱いになり、39歳での治療開始となれば胚移植は6回まで保険適用となります。

いまだ悲しみが癒えない時期だとは思いますが、今後の治療に取り組むための前向きな材料として、ご参考いただけると幸いです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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