現実は厳しくても幸せは気持ち次第。
もう少し、治療を続けることにしました。
高FSH・低AMHで主治医に「体外受精一択」と告げられたCさん夫妻。
自己卵子での治療をやめて卵子提供に気持ちが固まりつつあった二人でしたが、「まだ、できる治療がある」と、新たな可能性に挑戦中です。
目の前でカルテに押された"不妊"の文字にショックを受けて
結婚式の動画のエンディング、撮影スタッフに今後の目標を聞かれて「まずは家族を増やすこと。子どもは3人かな? 4人かな?」と笑顔で答えるCさん(32歳)とご主人のSさん(34歳)。「まさか、不妊に悩むなんて思いもしなかったから」。約2年間、自己流のタイミングで妊娠を目指したのち、地元の婦人科で一般的な検査を受けると、「先生が私の目の前でカルテに“不妊”という文字の判子を押したのがすごくショックで……。帰りに寄ったお店で主人に泣きながら話したのを今でも覚えています」と振り返ります。
それでも、当時の年齢はまだ26歳。結婚を機にパートタイムに変えていたCさんでしたが、妊活から少し離れたい気持ちもあって再び正社員として働き始めました。
まさかの早発閉経という診断でもまだ、現実味はなくて
入社1年目は産休を取れない職場だったため、まずは仕事に打ち込んでから妊活を再開。30歳を迎えたCさんは地元の専門クリニックで検査を受けたのですが、そこで血中FSHがほぼ閉経の数値である49・6mlU/mlと判明し、主治医に「早発閉経の可能性があるから、治療は体外受精一択」と告げられます。
「26歳まで月経周期は1日もずれることはなかったけど、徐々に狂い始めて1カ月半くらい生理がこない時もあったんです。でも、病院に通い始めたからどうにかなるだろうという気持ちと、本当かなっていう不思議な気持ちで、落ち込むよりも現実味がないような感覚でした」
結果が出ないまま初診から時間だけが経ち、県外のクリニックに転院。その時のAMHは0・07ng/mlという、限りなく低い数値でした。
主治医に卵子提供をすすめられるも、すぐには諦められなかった二人。治療の回数を決め、並行して卵子提供の情報を集めたり、説明会にも参加したそうです。
「2回目の採卵で採れたのは未成熟卵のみ。自己卵子での治療をやめる方向で気持ちが固まっていたんですが、主治医からIVA(原始卵胞体外活性化法)を提案されたんです。まだ残っている可能性にかけて、2回目の採卵から1カ月後に、IVA手術を受けました」
あらゆる誘発法を試しても成熟卵は一度も採れなかった
IVA手術後も採卵できたとしても変性卵や空胞ばかり。「今回この誘発法で採れなかったから次はこれを試そう」と、一度たりとも同じ排卵誘発法を提案されることはなかったそうですが、それでもやはり、一度も体外受精できる成熟卵を採取するには至りませんでした。
治療が長引いて精神的にも身体的にも負担が積み重なっていったCさんですが、Sさんの存在は確実に励みになっていたようです。
「妻にも話したいタイミングがあると思っているから、普段はあまり深掘りせず、話したい時にはじっくりと聞くようにしていました。そして、妻が試したいという治療があればお金のことを気にせずに試してみようと後押しし、ほとんど否定したことはなかったと思います。無理をしているとか格好つけているとか、ましてや無関心を装っているということではなく、妻の気持ちや体が最優先というのが当然のことだと思っているから」。そんなSさんのことを「ちょうどいい距離感でいてくれる」とCさんは語ります。
「私が悩んだ時はちゃんと話をする時間を作ってくれていたし、私が治療に没頭しすぎてネガティブにならないように、かわいいワンちゃんを家族に迎え入れてくれました。彼だからこそ、ここまでできたし、孤独を感じることはなかったです」
「まだ、できる治療法はある」あらゆる可能性に前向きに挑戦
いったん治療の区切りをつけたCさんは、早発閉経専門のクリニックに通うことも視野に入れ、SNSで同じような境遇の人とつながったり、関東・関西でオフ会を主催するなど、情報収集に取り組みました。
「でも、いくら彼が私の希望通りにしていいって言ってくれても、交通費や自費診療でかかるお金と可能性を天秤にかけたらあまりにも現実味がなくて。もうちょっと地元周辺でできることがあるんじゃないかって思うようになりました」
そんな時、PRP療法という治療法があることを知り、距離的に可能なクリニックでできることもわかったCさん。「半年から1年くらいやってみて、それでもできなければ最初に決めた通り卵子提供に挑戦しようかなって思っています」。
目の前にある幸せを大切に、二人で選ぶ最良の未来
「自分にとって大切な彼女とのことは、すべて受け止める覚悟があります。これを読んでくれている人も決して不妊になりたくてなっているわけではないのだから、自分を責めたり塞ぎ込んだりしないでほしい。あなたは悪くない。それを伝えたくて今回の取材を受けました」と最後に力強いメッセージを送ってくれたSさん。それを受けてCさんは「毎月、あなたは女性としての能力がないって言われているような気持ちになっていた時期もあったけど……」と言葉を選びつつ、「現実は変わらないなら自分の気持ちを変えるしかない。私にはこんなに私のことを思ってくれる旦那さんがいて、温かく見守ってくれるお互いの両親がいて、愛犬もいる。彼のポジティブに引っ張られるうちに、今あるものに目を向けるとこんなに幸せなんだって気づくことができました」と語ってくれました。
常に二人で考え、計画を立て、最大限できることを選択している二人。卵子提供を受けるのか、治療をやめるのか、養子縁組・里親制度なのか……。何を選んでも、二人で導き出した未来はきっと前向きで幸せに包まれているでしょう。
C さんの「ジネコ」活用方法
ジネコ公式サイトで早発閉経の情報を検索したり、早発閉経を抱えた人がどんな治療をしてきたのかを知りたくてHer Story やセカンドオピニオンのページを読んでいたCさん。いろんな人の物語を治療の励みにしてくれたそう。