排卵しなくても、体外受精に進むのは可能でしょうか?
多囊胞性卵巣症候群(PCOS)で排卵誘発剤を使っても子宮内膜が薄いままで排卵しないそうです。
内田先生● 内膜は卵子が育ち卵胞ホルモンを産生することで厚くなるので、「内膜が薄く排卵しない」というのは理解を改めたい点です。排卵誘発剤が効いて卵子が育てば内膜も変化していくと思います。
基本的にすべての不妊治療は卵子が育つことから始まります。今のハリーさんの状態では、残念ながら体外受精に進んでも妊娠は難しい印象です。
どのような治療を提案しますか。
内田先生●排卵誘発剤の手段にポイントがあると考えます。内服薬を使っているなら錠数を増やしていく選択もありますし、注射薬の排卵誘発剤を使うことも考えられます。そこで心配するのは、多胎と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の副作用です。体外受精の周期において正常の卵巣機能の場合には育っても10個前後。PCO の厳しい状態で注射薬を使うと、20〜30個くらい育つこともあり、注射の種類と使い方に注意が必要です。
当院の場合、排卵誘発剤を替えて排卵をうながし、セックスができる周期と人工授精できる周期で試み、その後に体外受精を考えます。またPCOS は糖代謝異常、いわゆる糖尿病予備軍の心配もあります。今は経口の糖尿病治療薬「メトホルミン」の使用も認められています。糖代謝が改善し、排卵誘発剤の効果が出やすくなるので、メトホルミンの使用も積極的に提案しています。
妊娠しやすい体づくりのためにできることは?
内田先生●体重が少ないと排卵しづらいので、今の体重はキープしながら、バランスの良い食事を基本にビタミンD や亜鉛などの微量元素をサプリメントで摂取するのもいいです。長い目で見れば、漢方薬もひとつの手段です。
治療のステップアップの進め方についてアドバイスをお願いします。
内田先生●体外受精はどのような治療をするのか、排卵誘発剤の種類、副作用、問題点もすべて理解してから治療のステージを変えていきましょう。そしてまず、「私の卵巣から卵子が育って排卵する誘発剤はありませんか?」という質問を主治医に戻してほしいです。あとは指示を聞いて、ご夫妻で納得のできる進め方を考えてください。言われるがままに進まないことは大切なことです。後悔のないよう、「納得できるまでしつこく先生に聞いてね」というのが僕のアドバイスです。