内膜が薄く排卵しなくても体外受精に進むべき?

排卵しなくても、体外受精に進むのは可能でしょうか?

相談者 : ハリーさん(26歳)夫婦そろって早く子どもが欲しい気持ちがあり、体外受精をしたいと思っています。でも、排卵誘発剤を使っても内膜が薄く、排卵しない私が体外受精を試みたところで着床するのでしょうか? 不妊鍼灸やよもぎ蒸しにも通っており、温活は意識しています。その他にもできることがあるでしょうか? クリニックの先生に言われるがまま進めている状態で、いつ体外受精をしたらいいか、いつまでタイミング法を続けるのかなどが不透明です。
内田クリニック 内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987 年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997 年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1 回来院の荒木先生による心理カウンセリングとサポート体制が充実している。

多囊胞性卵巣症候群(PCOS)で排卵誘発剤を使っても子宮内膜が薄いままで排卵しないそうです。

内田先生● 内膜は卵子が育ち卵胞ホルモンを産生することで厚くなるので、「内膜が薄く排卵しない」というのは理解を改めたい点です。排卵誘発剤が効いて卵子が育てば内膜も変化していくと思います。

基本的にすべての不妊治療は卵子が育つことから始まります。今のハリーさんの状態では、残念ながら体外受精に進んでも妊娠は難しい印象です。

どのような治療を提案しますか。

内田先生●排卵誘発剤の手段にポイントがあると考えます。内服薬を使っているなら錠数を増やしていく選択もありますし、注射薬の排卵誘発剤を使うことも考えられます。そこで心配するのは、多胎と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の副作用です。体外受精の周期において正常の卵巣機能の場合には育っても10個前後。PCO の厳しい状態で注射薬を使うと、20〜30個くらい育つこともあり、注射の種類と使い方に注意が必要です。

当院の場合、排卵誘発剤を替えて排卵をうながし、セックスができる周期と人工授精できる周期で試み、その後に体外受精を考えます。またPCOS は糖代謝異常、いわゆる糖尿病予備軍の心配もあります。今は経口の糖尿病治療薬「メトホルミン」の使用も認められています。糖代謝が改善し、排卵誘発剤の効果が出やすくなるので、メトホルミンの使用も積極的に提案しています。

妊娠しやすい体づくりのためにできることは?

内田先生●体重が少ないと排卵しづらいので、今の体重はキープしながら、バランスの良い食事を基本にビタミンD や亜鉛などの微量元素をサプリメントで摂取するのもいいです。長い目で見れば、漢方薬もひとつの手段です。

治療のステップアップの進め方についてアドバイスをお願いします。

内田先生●体外受精はどのような治療をするのか、排卵誘発剤の種類、副作用、問題点もすべて理解してから治療のステージを変えていきましょう。そしてまず、「私の卵巣から卵子が育って排卵する誘発剤はありませんか?」という質問を主治医に戻してほしいです。あとは指示を聞いて、ご夫妻で納得のできる進め方を考えてください。言われるがままに進まないことは大切なことです。後悔のないよう、「納得できるまでしつこく先生に聞いてね」というのが僕のアドバイスです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。