PPOS法で4回採卵、移植2回。刺激法を変えたほうがいい?
相談者 : はせさん(30歳)結婚3 年目、妊活歴1 年。採卵4 回(PPOS)、うち2回移植しましたが妊娠に至らず、次の移植はSEET 法を予定しています。採卵にあたってどの刺激法がいいのか、採卵数の多さか、数より質の良い胚盤胞か、どちらを優先して考えればよいかアドバイスいただきたいです。保険適用内での治療を希望しています。AMH は1.2ng/ml。子宮内フローラ検査ではラクトバチルス87.5%で、現在ラクトバチルス、各種ビタミン、葉酸、鉄、メラトニンほか、15 種ほどのサプリを摂取中です。
神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。
排卵誘発剤の投与量やトリガーの種類で胚盤胞到達率は変わりますか?
岩見先生●誘発剤の投与量で胚盤胞到達率は変わらないとされます。一方、採卵数には影響しますから、投与量は目標採卵数に合わせて決めます。はせさんはホリトロピンデルタをお使いで、AMH が1.2ng/mlと低め、これまでの最大採卵数は13個ということから、採卵10個を目標に投与量が設定されていると思われます。また、薬の種類によって胚盤胞到達率に差が出ることもありません。やはり、胚盤胞到達率に影響するのは卵子の質です。
トリガーは成熟卵の数には影響します。HCG併用やダブルトリガーにすることで成熟卵数が増え、それに伴って受精数が増えて結果的に胚盤胞到達率が上がることもあります。時間が関与する場合があることもわかっています。一般的に35〜36時間後のトリガーを38〜40時間後に遅らせて到達率が上がった例もあります。ただ、はせさんの成熟率、受精数は悪くありませんから問題ないと思います。
卵巣刺激法の違いは胚盤胞のグレードに関係しますか? また、薬剤によって卵子の成熟度は変わるのでしょうか?
岩見先生●胚盤胞のグレードというのは、実は見た目による主観的な評価です。明確な基準がなく、その施設のグレードごとの妊娠率を聞いて相関関係を知ることで、判断基準にはできると思います。
刺激法による卵子の正常率の差はないとされます。PPOS 法(合成の黄体ホルモンを使用してLH サージを抑制する調節卵巣刺激法)の誘発剤にホリトロピン アルファとホリトロピン デルタがありますが、文献上はどちらを使っても採卵数、成熟度に違いは見られません。
はせさんにアドバイスをお願いします。
岩見先生●保険診療であと4回の移植に向けた質のよい卵子の採卵をめざしましょう。誘発法はPPOS 法に偏らず、アンタゴニスト法、ショート法も検討してみるといいと思います。誘発時に注射の効果を高める薬を使うのもいいでしょう。また、採卵の間隔が短いと卵巣も疲れますから2カ月ほど空けて、この間に着床の最適なタイミング「着床の窓」を特定する検査・ERA を受けることをおすすめします。
少し気になるのがサプリ摂取の種類、量の多さです。卵子の質を意識して努力されていますね。でも、逆に体の負担になることもあるので主治医に相談し整理してはいかがでしょう。葉酸、アスタキサンチン、ビタミンD、DHEA が低ければDHEA、採卵時のみメラトニンくらいに絞っていいのではないかと思います。