新鮮胚と凍結胚どちらがいい?~田島先生【医師監修】

二人目不妊で凍結胚を4回移植したものの最初の2回は稽留流産に、あとの2回は着床せず。その後、医師のすすめで新鮮胚移植にトライしたそうですが、着床はしなかったそうです。この場合、次周期では凍結胚と新鮮胚どちらを移植したらいいかなど、今後の治療法について神奈川ARTクリニック院長の田島敏秀先生に教えていただきました。

神奈川ARTクリニック 院長 田島敏秀先生
1998年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学大学院医学研究科にて「酸素センシング分子機構の解明」をテーマに医学博士号を取得後(2010年)、不妊症、子宮内膜症、内視鏡手術の診療および研究に従事。慶應義塾大学医学部産婦人科学教室助教、東京HARTクリニックを経て2014年に神奈川ARTクリニックを開業し、院長に就任。多くの不妊に悩む患者さんの気持ちに寄り添った治療方針やアドバイスを行ってくれる。
相談者:ぶーちゃんさん(39歳)
今年で40歳。2人目不妊で今までに自費診療で4回採卵。最初の2回は9週で稽留流産に。後の2回は着床すらしませんでした。その後の採卵の際、医師から新鮮胚移植をしてみようという提案がありました。14個採卵できたので、体外7個、顕微7個にし、新鮮胚移植をしましたが結果はNG。残りの受精卵も凍結には至りませんでした。
年齢的にも焦りがあるのですが、私のようなタイプの場合は次に移植をする際、新鮮胚と凍結胚、どちらがいいでしょうか。

新鮮胚移植をすすめられるのはどのような時ですか

一般的に採卵をする際に薬を使って刺激をして卵子を育てている場合、同じ周期で移植をするよりも、いったん受精卵を凍結させて、体の調子をととのえてから凍結胚を融解して戻す方が妊娠率は高くなります。当院でも基本は全胚凍結してから移植をするようにしています。

ただ、何回か凍結胚を戻してもうまくいかない場合は、今までと違う方法を試すことでうまくいく可能性があるため、新鮮胚移植をおすすめすることはあります。また、卵の個数が採れない人には、最初から新鮮胚移植をベースにし、余剰胚ができたときに凍結するという方法をとることも当院ではあります。

2回の流産のあと、着床しなくなったのにはどんな理由が考えられますか

着床しない理由としては卵子の質の問題をはじめ、さまざまな理由が考えられます。ただ、着床の窓があっているなら、「2個移植」をすることで着床する可能性を高めることができます。

そもそも子宮内の細胞検知センサーが弱っている場合や、細胞量の少ない受精卵だとうまく子宮側のセンサーが働かず、着床できないことがあります。それを解決するために受精卵を2個同時に移植します。そうすると細胞量も2倍に増えるため子宮側のセンサーも反応しやすくなり、着床しやすくなるのです。

多胎のリスクはありますが、ぶーちゃんさんの今までの経過をみているとそのリスクは低いと考えていいでしょう。

ぶーちゃんさんは次に移植をする際に凍結胚と新鮮胚、どちらを移植した方がいいでしょうか

どちらの選択肢も考えられます。

ぶーちゃんさんは、一度に14個も採卵できているので、たくさん卵子が採れるタイプだと思います。こういった方は、採卵周期には卵胞ホルモン値(E2値)もあがりやすく、卵巣過剰刺激症候群になりやすいです。ホルモンが過剰な状態の時は、妊娠しても出産時の児体重が小さい傾向にあることもわかってきています。

そういったことをふまえるとたくさん採卵できたときは、凍結融解胚移植にした方がいいでしょう。

新鮮胚移植をするのであれば、刺激方法を変えて数を抑えてから行うのがいいでしょう。また、刺激をしたときの卵胞が10個行かない場合は、2個ぐらいを新鮮胚移植で戻し、残りを凍結するという方法も有りだと思います。

今後、ぶーちゃんさんはどのような治療を行うといいでしょうか。

2回稽留流産されていますが、言い換えると2回着床されているということなので、着床には恐らく問題がないと考えられます。そして卵子もたくさんとれることを考えると、胚盤胞2個同日移植もしくは、胚盤胞の凍結融解胚を2段階移植する方法がいいと思います。

また、流産を2回されているとのこと。一度稽留流産をすると、その後処置なども含めて約半年は治療できない状態になります。高齢ですとそれが大きなダメージになります。また、流産をくり返すことで子宮内膜が薄くなってしまう方もいらっしゃいます。それを避けるためにPGT-A(着床前診断)をやってみるのもいいでしょう。この検査は、ある程度卵子の個数が採れる人に向いており、やることで流産率をグッと下げることができます。

ただ、全額自費の検査になります。

その他、やっておいた方がいい検査などはありますか

カルテを拝見すると以前に慢性子宮内膜炎検査を受けられているとのことですが、受けた時期が2回流産をされる前であれば、再度検査をしておくといいでしょう。流産手術をした後は、どうしても菌に感染しやすくなるので、次周期の移植を成功させるためにも一度チェックしておいてください。

ぶーちゃんさんの年齢で「2回着床できた」ことは自信を持っていいと思います。必要な検査を受けつつ、積極的に移植をしていくことで、妊娠できる可能性はまだあると思います。かかりつけの先生に相談しながら治療をすすめていってくださいね。

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