【Q&A】次の採卵にむけて出来ること。~稲垣先生【医師監修】

しぃさん(37歳)
1人目妊娠までに、タイミング、人工授精5回するもダメで、わたしが多嚢胞気味と診断。AMH4.77。旦那も、精子数は多く、運動率もいいですが、精液量がいつもギリギリの0.2や0.3ほど。ただ液量以外はひっかからなかったので全てふりかけ。
体外受精、ショート法にて、1度目の採卵で23個採れ分割卵11個中、2PNが5こ。胚盤胞が5個。 移植1回目8週流産。2回目陰性。3回目で出産。3BB。
出産後10ヶ月で不妊治療を再開し、毎回内膜はすごくよく、12mmとか。
ただ、すぐに残り1つ3BCを移植しても陰性。残る1つは6日目3BCなので移植せず続けて採卵。
ただ今回もショート法にしたのですが、20個採れ、旦那の成績も濃度2億超えと運動率も今まで1番よかったので、全部ふりかけにするも、 2PN 1個/ 0PN 11個の12個成熟卵。結局全滅して胚盤胞0。前回もたくさん取れてたし、それで妊娠したので、全て同じ方法で、ショート法、ふりかけとしました。
そのあと1周期は自然に休ませて、(生理周期32日)、次の周期をプラノバール21日間服用後、生理が来たら採卵からスタートします。(今プラノバール飲んで12日目)
今回気になるのは、前回の採卵(出産後の42023.4.14 ショート法 全ふりかけ20個採卵 胚盤胞0)で、わたしが思うに、未熟卵が多かったのではないか?と思いました。
採卵3日前にエコーした時に29個程たまごが見えてたのに、E2が2764.1しかなかったので、まだ成熟卵が少なかったのではないかと思います。 この時はD12/首席卵胞䛿は0.7(そこから19.3 18.5 17.2 17.6と続きます。)
この次の日にオビドレル皮下注を22時に打ち、2日後14日8時40分くらいに採卵でした。1)この結果をみて刺激法はどういったのがおすすめでしょうか?
(今考えてるのは、刺激法をショート法からアンタゴニストか、PPOSにするか。)血液検査をしたら多嚢胞気味じゃなくなってると言われました。2)未熟卵が多い場合の改善点はありますか?

3)トリガー前のE2が気になり次は血液検査後すぐに教えてもらうようにしたのですが、この場合、採卵日を遅らせたら、成熟卵やいい卵が増えやすいとかありますか?

4)通っているクリニックはトリガーの時間が2日前22時と決まっているのですが、これを36時間ギリギリの21時にしたら、かなりリスクは高くなりますか?

5)トリガーをダブルトリガーにするのは効果的ですか?

6)受精障害かもと、次はスプリット考えてますが、クリニック側は、全部ICSIでいってはどうか?と言われました。

7)胚盤胞にならないのは、卵子精子、どちらか、また両方に問題あるかとみてます。2個は4日目で分割が止まりました。これを踏まえて全体的に次の採卵で どうした方がいいかなどありましたらおしえてほしいです。

長くなり申し訳ございません。他の先生の意見が聞きたくてお願いしました。よろしくお願い致します。

【医師監修】いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
①刺激法について
AMHがやや高めですので、当院ではショート法はむしろ敬遠します。今は保険適応がですのでクロミッド(+hMG+アンタゴニスト)法やPPOS、またr-FSHの使用であれば用量を減量する等で卵巣過剰刺激症候群の発症リスクが下がることが期待できます。
保険適応での対外受精において、制限されているのは胚移植の回数であって、採卵回数の制限ではないので、1回の採卵で多数採卵を目指すメリットよりもOHSSのリスク回避のほうを当院では優先します。
②未熟卵が多い場合の改善点について
今回の経過について、「未熟卵が多い」というのはあくまでも質問者の方の推測であって、事実かどうかは判然としないので、それには小生は回答しかねます。
未熟卵に対してはIVM:in vitro maturation体外成熟とでもなるのでしょうか;という手法が用いられることがありますが、まだ保険適応もなければ、内容も一定の見解を得たものでもありません。
ただ、経過をうかがって、小生の経験から少し申し上げれば、しばらく不妊治療から遠ざかっていて、その後の排卵誘発~採卵~体外受精において受精経過が芳しくないことはしばしば経験することです。おそらくではありますが、排卵障害の状態が継続した後の排卵誘発によってコンディション不良の卵が採卵された可能性が高いのではないでしょうか。

③採卵日について

上記の内容と関連しますが、おそらく卵の質自体は採卵周期にその卵胞がエントリーした時点ですでに大方決定しており、採卵のタイミングはあまり卵のコンディションには影響しないと思います。数時間の違いはあまり意味がありませんし、日の単位でのずれとなれば過熟となるリスクがあります。状態の良い未熟卵は、採卵後「自分で成熟」します。
④トリガーについて
当院の場合ですと、排卵のトリガーは採卵前37時間です。
⑤ダブルトリガーについて
当院では実施していません。ただし、点鼻による排卵刺激は37時間前と36時間前に点鼻してもらっています。
⑥スプリットまたは全ICSIについて
どちらも理解できます。

第1子妊娠時の経過よりスプリットでもよさそうですが、形態的にではありますが、若干量(→質も?)に心配のある精液所見からすると、形態的な判断にはなりますが、精子の選別ができ、かつ確実に卵子内に精子を送り込むことができる顕微授精には一定のメリットがあるのではないでしょうか。

⑦卵2個が4日目で分割が止まったことなどについて
個人的には採卵のインターバルが長すぎたことは今回の経過に大いに関係していると推察されるので、次回以降の採卵を積極的に計画するべきなのではと思います。排卵誘発法等は二の次なのではないでしょうか。

◆その他の見解について

(1)高AMHでの卵巣刺激方法について

上にも書きましたが、OHSSのリスクを考慮して低刺激での採卵を計画することが当院では多いです。

(2)卵巣刺激を工夫することで成熟卵を多く採ることは可能?

成熟卵の多さと排卵誘発法は個人的にはあまり関連はないと思っています。ただ、採卵数に比例して成熟卵の数は増やすことは理論的には可能ですが、現実的には理屈通りとはいかないことも多いと感じます。

(3)OHSSの考慮について

卵胞発育が不良の場合は採卵をキャンセルすることはありますが、当院の場合は原則全胚凍結なので、基本的には採卵は実施します。そのうえでOHSS予防として生殖医療ガイドラインに即してカベルゴリン(とレルゴリクス)の内服を実施しています。

(4)ダブルトリガーの有効性について

ダブルトリガーは当院の場合ですと、実施はしておりません。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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