男性不妊を乗り越え6回目の胚移植で出産

男性不妊を乗り越え6回目の胚移植で出産

治療を続けるか迷った時は、いつも初心に返るよう努めました。
婚約中にご主人から男性不妊を打ち明けられたNさん。
結婚と同時に不妊治療を始め、約3年間で3回の採卵、6回の胚移植を経てようやく妊娠・出産。
治療中の心境やご主人との関係についてお話をお聞きしました。

顕微授精を行えばすぐ妊娠できると思っていた

職場で出会ったN さんとご主人。結婚の話が出た頃に、ご主人から男性不妊かもしれないと打ち明けられました。

「最初は聞いてもピンと来なくて。それに今は不妊治療も進んでいるから、治療すれば普通に妊娠できるだろうと、あまり深刻には考えませんでした。二人ともまだ20代で若かったですし」

結婚前のブライダルチェックで、ご主人が正式に無精子症と診断され、同時に男性不妊の治療に力を入れているクリニックを探し始めました。

「ネットで検索しても、男性不妊を専門的に扱うクリニックが少ないのが意外でした。それでもいくつかの候補を見つけて、実績や口コミの評判などを考慮して、お世話になるクリニックを決めました」

 そして2016年9月に結婚。当時Nさんは総合病院の看護師として働いており、仕事と不妊治療の両立が難しかったため、まずご主人がMD -TESEを受けて精子を凍結保存し、Nさんに時間的なゆとりができたら採卵、顕微授精を行うことに。その翌年2017年3月にNさんは個人クリニックに転職してパート勤務となり、仕事をセーブして本格的に不妊治療を始めました。

同年7月に初めての採卵。この時、20代なら平均10個くらい採卵できると言われていたものの3個しか採れず、さらに副作用による卵巣出血で1週間の入院を余儀なくされました。

「採卵すれば顕微授精ですぐ妊娠できると思っていたのに、卵の数は少ないし体の負担も大きくて、かなりショックを受けました」

採卵、顕微授精、移植を繰り返すも陰性が続く

心身ともに大きなダメージを受けたNさんは、約1年間不妊治療を休みました。そして2018年8月に、昨年採った卵を使って初めての胚移植を行うも、結果は陰性。さらに11月に2回目の採卵。この時も卵は2つしか採れませんでした。翌2019年1月に2回目の胚移植を行い再び陰性。そして3月には3回目の採卵を行い、この時は12個の卵が採れました。同年11月に3回目の移植を行い、この時も陰性。2020年2月に、4回目の移植で初めて陽性となり妊娠が成立するも、7週目で流産という結果に。

「採卵の数が少なかったり、せっかく陽性になったのに流産してしまったり。私は本当に子どもが産めるのだろうかと、自信を失くしたことも度々ありました」

また、友人知人から次々と妊娠・出産の知らせが届くのにも堪えたと言います。

「どうして私だけ… と思ってしまって。夫婦それぞれの事情があるのだから、他の人と比べることではないと頭ではわかっていても、感情が揺れてしまうんです」

不妊治療を始めた頃の初心を忘れないように

そんな時は、ご夫婦でカラオケに行ったり、愛犬を連れてドライブに出かけて気分転換を図ったそうです。「私の実家から連れてきたミニチュアダックスフンドは、家族の一員であり、夫婦の心の支えでした」

それでもマイナスの感情が出そうな時は、不妊治療を始めた頃の気持ちを思い出すように努めたといいます。

「なぜ治療するのか、それは夫との子どもが欲しいから。どうしてもこの人と一緒にいたい。この人の子どもが産みたい。その初心を改めて確認するたびに、よし、また頑張ろうという気持ちになれました」

不妊治療が原因で関係がぎくしゃくしてしまうご夫婦もいるようですが、Nさんご夫婦は気持ちのすれ違いも乗り越えてきました。

「些細なケンカはしても、すぐ仲直りしています。お互いにこの人と一緒に生きていくという気持ちが強いから、相手に優しくできるんだと思います。男性不妊の場合、周囲に隠したい人もいるようですが、夫は自分から義父母に話してくれたし、今回の取材にも前向きでした。私は本当にいいパートナーに恵まれたと思っています」

まず夫婦の信頼関係を築いてそれから不妊治療を考える

2020年8月、Nさんは6回目の移植の時、初めて試みた二段階胚移植で2回目の妊娠が成立し、2021年5月に無事待望の第1子を出産しました。思うような結果が出ない時や治療の継続を迷う時も、夫と支えあうことで乗り越えられたと、Nさんは治療に臨んでいた時期を振り返ります。

「夫から男性不妊を告げられた時、もちろん治療を受けて子どもを産むつもりでいました。でも、もし子どもができなくても、やっぱり私はこの人とずっと一緒にいたい、だから結婚するんだと、心に決めていました。そのことは夫にもしっかり伝えました。後日、夫はあの時のNの言葉に救われた…と言ってくれました。私が思うよりもずっと、夫は自分の体に負い目を感じていたのかもしれません」

同じように不妊で悩んでいるご夫婦へのアドバイスとしては、「男性不妊に限らないと思いますが、まず夫婦の信頼関係を築いて、それから不妊治療に臨む。この順番を間違えないことが大切だと思います」。

Nさんは2023年1月に第2子を希望して、凍結胚の移植を行いましたが、残念ながら流産。「様子を見てまたチャレンジするつもりです。夫婦二人でも幸せだったけど、今は子どもと3人でまた違う幸せを味わっています。もう1人いたら、もっと楽しくなるかなぁって」

写真を撮る時も自然と笑顔で寄り添うお二人の元に、もう1人の赤ちゃんがやってくる日も、そう遠くないのではと感じました。

N さんの「ジネコ」活用方法

クリニックの待合室で「ジネコ」を知り、専門家の先生たちの情報が豊富に載っているので、その後WEB でもよく拝見していました。治療中は、ジンクスや体験談よりも、理論に裏付けられたデータなどのある記事を参考にするように心がけました。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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