【Q&A】今後の治療方針~浅田先生

ちゃどさん (29歳)
質問
体外受精にステップアップをした、2022/2頃から性交渉は一度もしていません。性交渉をすることで何か感染しても怖いし、不妊治療に影響が出てしまうと思うとできなくなりました。一般的なタイミング法では性交渉の回数が多いほど妊娠しやすいと聞きますが、体外受精の場合でも日頃から性交渉を行なっている方が着床・妊娠しやすいなど関係はあるのでしょうか?また、体外受精を行っている間はどの時期に関係を持っていいのでしょうか?

②次回の移植で3回目となり保険適用は半分になるためこの先を考えると不安になります。今できることは全てやろうと、主治医にERA検査や子宮鏡検査を相談しましたが、ERA検査はまだ確実性がないこと、超音波で見る限り子宮内膜炎の可能性は低いので検査を積極的に勧めないと言われました。主人とも相談し、ERA検査はしない方向で考えていますが、果たしてこのままの治療で私は妊娠できるのでしょうか。先生のご意見をいただけると嬉しいです。

③ステップダウンも一つの方法と聞きますが、私の場合はその選択肢で妊娠の可能性があるのかわからず迷っています。一度、不妊検査時のタイミング法(排卵誘発剤使用)で妊娠できましたが、5週目で流産。当時も排卵誘発剤を使用したことでOHSS状態となっておりとても苦しく、医師から「OHSS状態になることも考えて治療方法としては体外受精がベストである」と言われ人工授精は行わずすぐに顕微授精に進んだという経緯があります。タイミング法で妊娠できたならもう一度試してもできるのではないか..という気持ちも出てきます。可能性はあるのでしょうか?

長くなりすみません。どうぞよろしくお願いいたします。

浅田先生に聞いてきました

浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

排卵障害AMHが9.34、摂食障害が原因で月経が止まったということが質問者さんの気になるところです。
間脳の排卵を司るところと、摂食をコントロールしているところが比較的近くにあり、摂食障害は排卵障害に大きく影響している可能性があるため、やや心配です。

点鼻薬で上手く反応せずホルモン値が上がらなかったとのことですが、2回目の採卵で卵子が9個採れており、それが成熟卵で採れているとしたら、反応はしていると考えます。
卵子の成熟が低い場合だと、採れた卵が未熟ということになり、その後の受精率・胚盤胞到達率も当然悪くなります。

1回目と2回目があまり変わっておらず、あまり問題ないと思いますが、2回目は黄体ホルモンを使っていますので、脳下垂体のLHサージが起きにくい状況になっています。
PPOS(Progestin-primed Ovarian Stimulation)の場合は、点鼻薬の反応が悪くなる可能性をそもそも持っていると考えます。

質問者さんはAMHが9.34のため、HCGを使わずに採卵すべきなので、PPOSではなく、アンタゴニスト法の方が点鼻薬もよく作用しますし、OHSSを予防できます。
普段排卵が上手くいっていないようですので、原始卵胞から半年かかって卵胞が育ってくるわけですが、その半年のうち、後半の3ヶ月はホルモン依存といって、ホルモンに左右されるため、この辺りを考慮した卵巣刺激にしなければいけないと思っています

卵巣刺激にもう少し精通した先生のもとで卵巣刺激をするというのが、一番のアドバイスになるでしょう。

質問①ですが、タイミング法、性交渉は妊娠するための基本ですので、行っていただいて全く構いませんが、質問者さんは簡単には排卵しない視床下部性の無月経なのかもしれないので、LH-RHテストを施行して、視床下部の障害が、以前の摂食障害の後どうなっているのか診断する必要があると思います。

一般的に、体外受精中に妊娠するための性交渉を勧めることはありません。
質問②のERAなどで子宮内膜の状態を見ても妊娠率は上がりません。
信頼のおける研究においてERAは妊娠率がむしろ下がったため、世界的には、否定どころかやってはいけない方向へ進んでいる検査です。
妊娠の主役は受精卵です。
子宮の側で妊娠をコントロールしていることはないため、子宮外妊娠が存在し、代理出産が可能になっています。
子宮の側という原因を考えることは、妊娠という目的に対して遠回りのお話になりますので、ご注意いただきたいと思います。

質問③のステップダウンですが、質問者さんはHCGを使うとOHSSになりやすい方だと考えます

AMHが2桁近くあるということはOHSSに要注意ですので、適切に刺激をし、HCGを使わず採卵をして凍結融解胚移植をするというのがベストな戦略です。
ステップダウンしてもよいのですが、今まであまり自然排卵していない方が、妊娠率がより低い治療法を選択するというのは、余計目標から遠ざかると考えた方がよいのではないでしょうか。
早く妊娠するという目的であれば、AMHが高くても多嚢胞性卵巣症候群ではないという医師のもとを離れましょう。
視床下部性の無月経があれば、卵巣の見た目は多嚢胞性卵巣症候群のようになりますし、卵胞が途中までも育ってないということもあります。
その辺りの病態をきちんと理解している医師のもとで成熟卵をしっかり採ることに専念することが、質問者さんにとって最善の方法だと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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