内膜が育たないまま移植の繰り返し…。
ほかに方法はないの?
採卵できた卵子は2〜3個で、そのうち胚盤胞は1個だったそうです。
森本先生●たけさんのAMH2・28ng/mlにしては、胚盤胞は少なめですね。まず卵子をつくる刺激方法には、採卵数を増やす方法から、採卵数はやや少ないものの卵子の質を良くする方法までさまざまあります。たとえば、採卵数を増やす場合はアンタゴニスト法、ショート法のほか、hCG の量を増やす方法もいいでしょう。ただ、卵子数を増やしすぎると質が低下しやすくなるので、さじ加減が必要です。もともと持っている卵巣の力もあるので、そのなかで胚盤胞が1個でも、グレード4B 以上に高めることができれば妊娠は可能です。それには細胞内のミトコンドリアを活性化することが大切です。サプリメント(L―カルニチン、コエンザイムQ10、NAD)の摂取や、それを体内に取り込むための有酸素運動、補助治療(鍼灸、レーザー)などを組み合わせた治療が有効になります。
子宮内膜が薄い状態での移植について、どう思われますか?
森本先生●胚の力が強ければ子宮内膜が多少薄くても着床できます。それでも内膜が厚いに越したことはありません。
内膜の血液循環を改善する治療薬には、小血栓を予防するシルデナフィルR腟錠(自費)や低用量アスピリン(自費)などがあります。ただ、前提として酸素を豊富に取り込む子宮内膜の血管を増やすことが重要ですので、ここでも鍼灸、漢方薬、有酸素運動がおすすめです。特に当院が推奨するミトコンウォークを30分×週3回行うことで、着床率の向上など良い結果が得られています。こうして体が整ってきたら、近年は安全なお産ができると注目される自然周期の移植に挑戦されてもいいと思います。
保険診療では同じ治療を繰り返すしかないのでしょうか?
森本先生●保険診療にもさまざまな治療法があり、一つではありません。ただ、治療を繰り返していくと採卵数は減り、卵子の質は落ちやすくなります。また治療のストレスが重なると、脳内から活性酸素が大量に出てミトコンドリアに悪影響を与えます。そういう場合は心理カウンセリングも有効になるでしょう。
たけさんはエストロゲンが十分に補充されても、それを受け取る力が弱いのかもしれません。自由診療では総合的な視点で卵子の質を上げると同時に、子宮内の血液循環を高めて内膜の薄さを補う治療を行うため、妊娠に早く近づきやすくなります。こうしたホリスティックな考え方を取り入れるのも一つだと思います。