【Q&A】慢性子宮内膜炎は再検査が必要?~吉川先生

kさん(29歳)

慢性子宮内膜炎検査(CD138と子宮鏡検査)を行いました。
子宮鏡検査では、問題なく綺麗な子宮だと言われました。
CD138の結果は20視野で78個との結果でした。
5個以上が陽性とのことで高い数字に驚きました。
ビブラマイシンを朝夕2回を14日飲むように言われました。
通っている病院では、ビブラマイシンで9割が治るとのことでしたが、78個という高値でも1回の治療で治るものでしょうか。
9割の人が治るということであれば、再検査せずに移植したいと思っていますが、無謀なことでしょうか。

津田沼IVFクリニックの吉川守先生に伺いました。

吉川 守 先生(津田沼IVFクリニック)
1991年山梨医科大学(現・山梨大学)卒業。亀田総合病院、船橋二和病院、セントマーガレット病院、山王病院などを経て、2010年11月I津田沼IVFクリニックを開設。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●慢性子宮内膜炎の場合、不妊治療や妊娠においてどのようなリスクがありますか?

不妊症、反復流産、着床不全では、慢性子宮内膜炎が妊娠予後不良に関与しています。

慢性子宮内膜炎では体外受精成績が低くなり、着床率・妊娠率と出産率が低下し、流産率が上昇します。

●慢性子宮内膜炎の検査が必要だと判断されるのは、どのようなときでしょうか?

なかなか着床しなかったり、流産を繰り返す場合には、慢性子宮内膜炎の検査をしましょう。
また、子宮内病変のない女性での慢性子宮内膜炎の有病率が15.7%であるに対し、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内癒着、および中隔子宮を有する女性における慢性子宮内膜炎の有病率は、それぞれ85.7%、69.0%、78.9%、および46.2%という報告がありますので、子宮内病変のある女性は慢性子宮内膜炎の検査をしましょう。

●子宮鏡検査で子宮内腔の見た目に問題がないにも関わらず、実は子宮内膜炎である、というケースは多いのでしょうか?

慢性子宮内膜炎の診断における子宮鏡検査の精度は67%に過ぎず、組織学的検査に代わる診断手段として用いるべきものではないとされています。

●子宮内膜炎の治療としてビブラマイシンを内服していますが、CD138が高値の場合、低値と比べ治りにくいということはあるのでしょうか?

CD138の高値・低値と、慢性子宮内膜炎の治りにくさとは関係ありません。

●子宮内膜炎の治療後、再検査で陰性を確認してからETをしたほうが良いと思いますか?先生の考えをお聞かせください。

抗生物質治療後、慢性子宮内膜炎を有する女性のその後の妊娠における着床率は、慢性子宮内膜炎を有しない女性と同様であり、慢性子宮内膜炎治療は体外受精転帰を改善する可能性があります。

妊娠を試みる前に慢性子宮内膜炎を診断し治療することは、自然および生殖補助医療の結果を改善するための妊娠前のケアの重要な要素になると思われます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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