【Q&A】子宮内膜症の治療について~吉川先生

はなさん(37歳)

今年1/20MRI検査で左右卵巣は6.4cmと6.8cmのチョコレート嚢胞があると診断されました。また、12/23のマーカ検査でca125は145となり、主治医先生は手術も考慮すべきとおしゃってました。ただ妊娠希望があり、今の状態で2月から採卵するのは、やはりリスクが高いでしょうか。
また、ネット上で紹介された手法はホルモン治療と穿刺を組み合わせで一旦嚢胞を縮小する対処療法があります。この療法を実施する場合、今後癌になるリスクが高くなることはありますでしょうか。

津田沼IVFクリニックの吉川守先生に伺いました。

吉川 守 先生(津田沼IVFクリニック)
1991年山梨医科大学(現・山梨大学)卒業。亀田総合病院、船橋二和病院、セントマーガレット病院、山王病院などを経て、2010年11月I津田沼IVFクリニックを開設。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●採卵の際、穿刺等に影響が出てくる大きさはどのくらいからでしょうか?

卵巣の位置、チョコレート嚢胞と発育卵胞の位置関係、発育卵胞数、子宮の形態、体格など多様性があり一概には言えませんが、一般的に7cm近い両側チョコレート嚢胞存在下での採卵は非常に難しいことが想定されます。

チョコレート嚢胞の裏にある卵胞は、超音波検査で恐らく見えないでしょうから、採卵数は減るかも知れません。採卵の際、穿刺等に影響が出てくる大きさは6cmくらいからでしょうか。

超音波検査で子宮・卵巣の観察が困難になります。

●CA125が145ととても高い値ですが、この方は内膜症の手術を行った方が妊娠の確率があがると思われますか?先生のお考えをお聞かせください。

チョコレート嚢胞により体外受精での妊娠率は影響を受けないとされていますが、嚢胞手術後には採卵数は増加すると見込まれますので、
良好胚数の増加による妊娠率の上昇は期待できると思います。
患者さんや画像を見ていない状況下ですが、次のような理由により、私も主治医の仰るように、「手術も考慮すべき」と思いますし、「はな」様の仰るように、「リスクが高い」と思います。

●子宮内膜症の治療と癌のリスクについて教えてください。

今後もチョコレート嚢胞は大きくなると思われる一方、自然に縮小・消失は望めないと思います。

また、感染や破裂、癌化の恐れもあります。

日本産婦人科医会のホームページの卵巣チョコレート囊胞への対応 (http://bit.ly/3HycB8C) では、「30歳台の卵巣癌合併率は1.3%、6cmの嚢胞の卵巣癌合併率は0.6%」「手術を行わない場合、嚢胞の感染や破裂のリスクが上がる」「直ちに挙児希望がある場合、ある程度の大きさを認めるチョコレート嚢胞の場合、薬物療法よりも手術を先行することも考慮され得る」としています。

また妊娠中に腹痛、破裂の危険があります。
同ホームページでは、「妊娠中のチョコレート嚢胞では、非妊娠時に比べて感染や破裂などのトラブルを起こす可能性が高くなる」としています。

そして、医師の立場から、通常の診察が困難でしょう。
卵巣刺激中に腹痛が生じる恐れがあります。
発育卵胞数に比較して採卵数が減ると予測されます。

また、チョコレート嚢胞を穿刺してしまう恐れがあります(穿刺・吸引を否定する訳ではありません)。

37歳という比較的若い年齢、やせ型、月経周期28日、月経期間4日、AMH5.0という高値などの情報から、術後の卵巣機能も比較的良好であると推測されます。

同ホームページに、「年齢および卵巣チョコレート嚢胞のサイズの評価では卵巣癌化のリスクはそれほど高くない」「薬物療法により、ある程度の嚢胞の縮小も期待される」とあります。

「はな」様がご提案される「嚢胞を縮小する対処療法」も治療法の一つと思いますし、「癌になるリスクが高くなることは」ないと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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