少しでも胚盤胞の着床率をあげるには

胚盤胞まで培養して移植したのに陰性…。当事者なら落胆してしまいますよね。少しでも陽性の可能性を高めるために2段階移植と2個同時移植を検討される方も多いようです。そこで、ときわ台レディースクリニック院長の藤野剛先生にそれぞれの特徴と、今回の相談者さんの場合はどちらが向いているかなどをアドバイスしてもらいました。

2段階移植と胚盤胞2個移植の着床率について みみさん(29歳)
AMH1.77でth1/th2バランス比16.0です。過去2回採卵。どちらも6~7個取れましたが、胚盤胞になったのは合計3個でした。採卵周期にそのまま初期胚移植、2回目は3bbの胚盤胞移植、3回目は4bcと4cb胚盤胞を2個移植しましたが、すべて着床すらせず陰性。現在3回目の採卵をショート法でするため注射をしています。次回の移植で胚盤胞2個移植をするか、2段階移植をするか迷っています。
ときわ台レディースクリニック  藤野 剛 先生
帝京大学医学部卒業、帝京大学医学部産婦人科入局。焼津市立総合病院、帝京大学医学部付属病院、大川病院を経て2008年9月ときわ台レディースクリニック開業。一般婦人科にも対応し、地域に根差した診療を心がけています。

移植しても着床しなかった原因としてどのようなことが考えられますか。

みみさんの情報を拝見していて思ったのは、29歳のわりに胚のグレードが低いということです。おそらくグレードの低い胚を移植しているから着床しないのではないかと思います。

胚盤胞のグレードは、1~6の数字とa~cのアルファベット2つの組み合わせで評価され、数字は大きいほど良く、アルファベットはc→b→aの順に良いとされています。先日移植した胚盤胞のグレードを拝見すると、3bb、4bc、4cbとのこと。何日間培養したかによりますが、もしday5ならば、この受精卵だと戻しても着床するのが難しい可能性があります。29歳であれば、胚盤胞は4bb以上のグレードがほしいところです。子宮筋腫や中絶、下垂体のトラブルなど、卵子の質を悪くする疾患がないかどうかを調べてみることが大切です。

今回の相談内容に記載がなかったのですが、排卵誘発剤にどんな薬を使っているかもポイントになります。今、どんな誘発剤を使っているのかはわかりませんが、もしクロミッドで誘発しているのであれば、胚の質が落ちてしまうリスクがあるので、別の方法にした方がいいでしょう。

また、卵子が良質だったとしても精子の状態によっても胚の分割具合を左右します。みみさんからの情報によると精子の状態は「良好」とあります。ただ精子のDNA断片化率(ダメージを受けている割合)までは恐らく調べていないと思われます。精子DNA断片化検査(DFI検査)ではDNAにダメージを持っている精子と未熟な精子の割合を調べることができます。

良好な胚盤胞に育つかどうか、大きなかぎを握っているものの1つが培養方法です。どんな培養方法で受精卵を育てているのかをかかりつけクリニックの培養士さんに一度聞いてみるのもいいでしょう。

ちなみに当院では受精卵をよりよい環境下で育むために「タイムラプスインキュベーター」を導入し、培養しています。以前のインキュベーターで培養した受精卵と比べて胚盤胞到達率、妊娠率ともにアップしています。

胚盤胞到達率をあげるにはどうしたらいいでしょうか。

みみさんはショート法でやっていますが、思うような結果が出ていないということ。まずは当院で最初にトライすることが多いアンタゴニスト法に変更。HMGやレコベルを使って卵胞を育てる方法にすると今よりも良い卵子を採卵することができるのではないかと考えています。

さらに、培養環境が高精度にととのっているタイプラプスインキュベーターで培養することで胚盤胞到達率は高くなるのではないかと考えています。

次の周期は2個移植と2段階移植をやろうか迷っているようですが、先生のお考えを教えてください。

一度も着床していないということなので、2段階移植や2個移植を検討する前に着床障がいがないかを確認した方がいいでしょう。みみさんは、th1/th2バランス比16.0ということで、何もしないと反復着床不全を引き起こす可能性があります。タクロリムスを服用することで、改善することができます。

さらに子宮内に着床を妨げる原因がないか子宮鏡検査を受けてみた方がいいでしょう。

また、着床にふさわしいと考える日時にズレがないかを調べるERA検査(子宮内膜着床能検査)、子宮内に着床にとってサポートとなる乳酸菌をはじめ、良い菌がどのくらいいるかを調べるEMMA検査(子宮内マイクロバイオーム検査)、着床不全や流産の原因の1つに子宮内膜炎がありますが、それを引き起こす細菌を調べるALCE検査も受けておいた方がいいでしょう。

ERA検査、EMMA検査、ALICE検査は先進医療に認定されているため、保険適用の体外受精の周期に受けることができます。(検査費用自体は自費になります)

これらの検査を行い、問題がなければ2段階戻しや2個同時戻しにトライするのも有りだと思います。

2段階戻しと2個同時戻しはどちらがいいのでしょうか

いずれも妊娠率に差はほぼありません。ただ2段階移植でも2個同時移植のどちらにも言えますが、質の良くない胚を2個戻してもどちらも着床しないことが多いため、戻すなら良質な胚を2個戻すと着床や妊娠に結びつく確率が高くなります。

ただ、双子率は2段階戻しが0%とすると、2個戻しは23%と確率はかなりあがります。

さらに、胚の成長スピードの遅い早いを気にする方もいますが、しっかり分割しているものであれば、アシストハッチングしてあげることで着床するというデータを出しているところもあるといいます。

まずは、着床障害となる原因がないか検査を行い、アンタゴニスト法で卵胞を育てて採卵。よりよい環境で培養をし、胚盤胞まで育ったら1個ずつ戻していくのがいいでしょう。みみさんは充分に妊娠する可能性はあります。あせらず妊娠に向けて進んでいってくださいね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。