妊娠には子宮内の細菌バランスが重要とされています。子宮内の善玉菌の割合などがわかる子宮内細菌叢検査について、うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。
子宮内の善玉菌が妊娠や出産をサポート
細菌のバランスを知る子宮内細菌叢検査
「子宮内細菌叢検査」は子宮内の細菌の割合と、細菌性の子宮内膜炎などの原因になる病原菌を特定する遺伝子検査です。当院では良好胚を2 回移植しても着床しない反復着床不全の人におすすめしています。
検査は月経終了後のお薬を投与していない自然な子宮内膜の状態で行うのが理想とされています。検査前に性交渉しても問題ありません。検査は綿棒や細い器具を使い、子宮または腟から細胞を採取します。数分程度の検査ですが、人によって生理痛のような痛みや激痛を感じることがあります。痛みが心配な人は、事前にご相談ください。当院は事前に坐薬で痛みを和らげる工夫をしています。採取した検体は検査機関で遺伝子解析を行い、約3週間後に結果がわかります。
検査結果に応じた治療法で子宮内環境を整える
検査の結果、子宮内の善玉菌が90% 未満の場合や、まったく存在しない場合は、乳酸菌を経口または経腟投与し、子宮内環境を整えます。また、子宮内に悪玉菌の割合が増え、子宮内膜炎など細菌性の炎症に関連する細菌が見つかった場合は、菌の種類に応じた抗菌薬で治療します。
海外のデータでは、反復着床不全の人の約60%に子宮内膜炎が認められたという報告があります。たとえば、当院でも反復着床不全の方(33歳・他施設で体外受精を5回実施)に、子宮内細菌叢検査と抗菌薬治療を行ったところ、初回の胚盤胞移植で妊娠が成立し、妊娠・出産に至ったケースもあります。検査では微量の悪玉菌も見つけてくれるため、炎症が起きていなくても、早めに治療すれば子宮内膜炎の予防になります。
他の検査と組み合わせた妊娠率の検証が大事
子宮内細菌叢検査は自費(治療薬は保険)になるので費用がかかりますが、先進医療の特約保険などに加入していると負担は軽くなります。検査は単独で受けることもできますが、ERA(着床の窓を調べる検査)も同時に受けると、一度の検体採取で済み、身体的な負担も軽減します。
反復着床不全の原因は受精卵側と子宮側、または両方に隠れている可能性もあります。そのため、子宮内細菌叢検査でうまくいく場合はいいですが、そうでない場合は受精卵側の問題も考えられ、原因の究明に偏りが生じます。たとえば、E R A 検査は単独で行うよりも、P G T – A(着床前診断)と組み合わせると、60% の高い妊娠率が得られます。子宮内細菌叢検査も、ERAやPG T – A 検査などできる検査を行ったうえで、妊娠率を高める治療を進めていくことが大切です。
子宮内細菌叢検査
●どんな治療?
子宮や腟に存在する善玉菌(ラクトバチルス属乳酸菌)など細菌の割合や、細菌性の炎症の原因菌を特定する遺伝子検査
●いつ受ける?
月経期間と前後3 日間を除き、いつでも可能
●どんな人が受けるといい?
良好胚を2回移植しても着床しない反復着床不全の方におすすめ