子宮内膜症や子宮筋腫など不妊の要因となる疾患について教えてください!

不妊の原因には年齢や卵管因子、精子の問題などさまざまなケースが考えられますが、なかでも比較的多いとされている婦人科系の病気。どのような疾患があるのか、その症状や治療法は? 赤ちゃんを希望する場合はどう対処したらよいのか、大島クリニックの大島隆史先生に詳しいお話を伺いました。

大島 隆史 先生(大島クリニック)自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与される。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。

子宮内膜症患者の半数は不妊になる !?

不妊の原因となる婦人科疾患でもっとも多いのは子宮内膜症ではないでしょうか。日本では25~50 %の人が子宮内膜症を持っており、それが不妊の原因だといわれています。子宮内膜症のなかで特に不妊に大きく影響するのが卵巣にできるチョコレート囊胞。これは月経血が生理の時に逆流し、卵管からお腹の中にこぼれた時に内膜成分が卵巣にくっついてできる疾患と考えられています。女性ホルモンの影響により卵巣内でどんどん成長し、卵子を破壊してしまうのですね。

子宮に関する疾患としてはほかに子宮筋腫があります。子宮の平滑筋が膨らんでしまうという病態で、ほとんどが良性の腫瘍ですが、大きさやできる場所によっては着床に影響が出る場合も。注意すべきは子宮内膜内に飛び出してできる粘膜下筋腫。10年ほど前のアメリカの論文で、4.5 cm 以上の筋腫があると妊娠に影響が出ると報告されたことがあります。子宮筋腫は20代、30代のお若い方でも罹ることがあるので、年齢はそれほど関係ないと思います。

また、卵巣に発生する疾患として卵巣囊腫があります。これは中に水などが溜まる腫瘍で、不妊というより卵巣がんへ移行するリスクを心配すべき疾患。6cmくらいになると手術が必要になりますが、切除する際、卵子が存在する卵巣の皮質まで取ってしまうので、不妊のリスクもワンランク上がってしまうといわれています。

不妊の原因となる疾患

症状

子宮内膜症は生理痛が強くなることが多く、なかには動くこともできず、安静が必要になる人もいます。生理痛のほか、性交痛や排便痛などを感じる人も。

治療方法

卵巣内に子宮内膜症ができるチョコレート囊胞の場合、QOL(生活の質)が保てないほど痛みが強く、周囲への癒着がひどい時は手術で囊胞を切除することがあります。症状がほとんどなく、軽症の場合は無治療で経過を見る場合が多いようです。

子宮内膜症は女性ホルモンによって増悪する疾患なので、まだ妊娠を考えていないケースでは低用量ピルやホルモン剤を使って生理を止め、病変を縮小させたり、進行にブレーキをかける治療を行うこともあります。

挙児希望の場合

子宮内膜症は手術をしたから妊娠率が格段に上がるというわけではありません。軽症の場合は生理を止める治療や手術を優先するのではなく、誘発剤を使って早く妊娠成立にトライしたほうが望ましいでしょう。

チョコレート囊胞だと手術をすることで妊よう性が下がってしまうことが多く、囊胞を切除してもすぐに再発するケースがあるので、事前にAMH値を測って手術を選択するかどうか検討されたほうがいいと思います。

子宮内膜症があっても妊娠するための治療を積極的に行い、難しいようであれば手術をして、それから体外受精に臨むという形がよいのではないでしょうか。

症状

子宮の内側にできる粘膜下筋腫の場合は経血量が多くなります。ほかに強い生理痛や頻尿、便秘などを訴えるケースもありますが、症状がほとんど出ない人も多くいらっしゃいます。

治療方法

軽症の場合は治療をせず、経過観察を行います。筋腫がかなり大きかったり、症状がひどい場合は手術で筋腫部分を切除、場合によっては子宮を全摘することもあります。

挙児希望の場合

着床に影響があるかもとされる粘膜下筋腫の場合でも、まずは積極的に妊娠にトライを。受精卵はいつも筋腫部位に着床するわけではないので、ちゃんと排卵して人工授精まで進んでも結果が出なかったら、そこで手術やステップアップを考えてもいいのでは。採卵をして体外受精でできた胚を凍結保存。筋腫の手術を受け、子宮の環境を改善してから移植するという選択肢もあります。

症状

初期の場合、自覚症状はほとんどありません。囊腫が肥大してくると腹痛や腰痛、頻尿や便秘、腹水などを生じることがあります。

治療方法

囊腫の大きさが6~7cm以上になると、卵巣の根元が回転してねじれてしまう茎捻転や卵巣がんへ移行するリスクがあるので手術で摘出します。

挙児希望の場合

6cm以下であれば無治療でも妊娠にほとんど影響はありません。卵巣囊腫があると気づかずに妊娠し、帝王切開時に初めて存在がわかったというケースもあります。しかし、手術が必要になるほど囊腫が肥大してしまうと、少なからず妊娠に影響が出てしまうので、年に最低1回はがん検診とエコー検査を受けてチェックしておくと安心だと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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