着床のベストなタイミングを調べることができるといわれているERA検査。実際に導入している明大前アートクリニックの北村先生にその内容や効果についてお話を伺いました。
子宮内膜の遺伝子を調べて適切な移植時期を推定
検査費用は14万円程度。解析は海外で行います
E R A 検査は体外受精( もしくは顕微授精) において、形態的に良好な胚を複数回移植したにもかかわらず着床しない方におすすめしています。
検査の方法ですが、ホルモン補充周期の場合は黄体ホルモン投与開始日を0として5日目に、自然排卵周期の場合は排卵日から5日目に子宮内膜を採取します。
外来でできる検査で、時間にしたら5分程度。組織を採取する機械を挿入する時に軽い下腹部痛を感じる患者さんもいらっしゃいますが、ほとんどの方は問題なく受けられています。
少しネックになるのが費用と検査結果にかかる時間。当院の場合だとE R A の検査料は14万円( 税抜)。ほかの不妊検査と比べて高額なので、経済的な理由で迷う方もいらっしゃるようです。また、採取した検体は海外の機関に送って解析するため、結果が出るまで3 週間程度かかってしまうのですね。
ERA検査をして子宮内膜と受精卵の時間が合っていれば通常通り、標準的な時期に戻しても問題はありませんが、ずれていたら移植の時期を通常より前や後ろにしたほうが好ましい。当院の場合、検査を受けた方全員ではありませんが、結果を参考にしてうまく着床・妊娠した方もいらっしゃいます。なかなか着床しないという方は受けてみる価値はある検査なのではないでしょうか。
検査の内容や費用、これまでのデータなどよくご説明して選択肢の一つとして提案します。検査を受けるかどうかは最終的には患者さんに決めていただいています。
先進医療は経過を見ながら段階を踏んでご提案
2022年の春から不妊治療に保険が適用されるようになりましたが、現状、ERA検査は先進医療になっています。先進医療とは厚生労働大臣が認める高度な医療技術や治療法、検査などのうち、有効性や安全性の一定基準は満たしているものの、保険適用外(自費診療)の治療のことです。
保険診療では保険診療と自費診療を併用した診療は認められていませんが、先進医療の承認を受けたものは併用が可能となっています。「混合診療ができるのなら受けたい」と願う患者さんもいるかもしれませんが、先進医療は経済面などを考えるとやはりハードルが上がってしまいますよね。
当院では、ERA検査をはじめ、先進医療は受ける価値があるものと考えていても、一度にすべてを患者さんにご提案することはありません。いきなり全部おすすめしても患者さんは「どうしよう」と迷ってしまうはず。選択肢が多すぎるのも良くないことだと思います。
治療の結果を受けて、その段階ごとに患者さんが受けやすい検査をご提案。着床不全の場合は、まずは費用も手頃で採血だけで簡単に調べられる免疫の検査などをおすすめしています。それでも原因がはっきりせず、治療結果も出ないという場合は子宮内細菌叢の検査やERA検査を。その先となると胚盤胞の異常を調べるPGT -A(着床前染色体異数性検査)などもあると思います。
治療の経過を見ながら適切なタイミングで、その方にとっての必要性、費用などを考えながら、受けるべき検査をご提案していくように心がけています。
ERA検査
●どんな治療?
子宮内膜の組織を採取し、次世代シーケンサーを用いて遺伝子を解析することで着床の適切な時期を判断する検査。
●かかる費用や期間は?
先進医療(保険適用外)なので検査費用は14 万円程度。海外で解析するので結果が出るまで3週間ほどかかる。
●どんな人が受けるといい?
おもに形態的に良好な胚を複数回移植したのにもかかわらず、なかなか着床しないという人が対象に。