【Q&A】卵管水腫切除の必要性について~稲垣先生

よっぴさん(39歳) 
過去に子宮外妊娠をして片側卵管切除しました。
その後、子宮卵管造影にてもう片側の卵管水腫が見つかり、IVFにステップアップしました。
顕微授精で第一子を授かりましたが、その後、5回の胚盤胞移植を行いましたが妊娠に至りません。
ここにきて医師から卵管切除手術をすすめられましたが、医師である夫からは猛反対されています。
理由は、
①なぜもっと前から手術をすすめなかったのか、確証もなく消去法での手術は意味がない
②良好胚も残っておらず、年齢的に厳しいのに今さら手術をしても妊娠は望めないとのことです。
出産後、移植前はエコーでほぼ毎回子宮に粘液が溜まっており、このまま移植を繰り返しても難しいんじゃないかと思っています。
年齢的に厳しいのはもちろんわかっていますが、できることはしたいと思っていても夫には理解をしてもらえず、悩んでいます。
夫が言うように、本当にデメリットしかないのであれば手術も妊活自体も諦めたいのですが、なかなか希望を捨てられずにいます。

稲垣先生にご意見をに聞いてきました。

いながきレディースクリニック 稲垣 誠 先生 
1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
・相談内容に対する印象について
卵管の扱いについて、なかなか悩ましい問題かなと思いました。絶対的な正解はないので。

・子宮内の粘液について

卵管内への分泌物は、本来ならば子宮側と卵管采側の両側に流出して貯留しないようになっていますが、卵管水腫、すなわち狭窄や閉塞がある場合、それがうまく還流せず子宮内に貯留することが推測されます。
この方の場合、子宮内の貯留物の原因はこれによる可能性が高いと思われます。
この分泌物にはサイトカイン等が多く含まれ、受精卵の着床にはネガティブに作用する可能性が高いといわれています。
このためこういうケースには卵管切除または起始部における結紮が考慮されます。
これ以外にも子宮内ポリープや悪性腫瘍(内膜がん)等でも子宮内に液体が貯留することがあります。

・卵管切除について

経過から考えれば卵管切除も十分考慮すべきだと考えます。
ただし、手術で摘出したものは絶対に元通りに復元することはでいないのでその決断は慎重になるべきでしょう。
卵管切除の前に、胚移植不成功の原因検索としてERA検査、子宮内フローラ検査、子宮鏡検査(+慢性子宮内膜炎の検索)、新たに受精卵を獲得する場合にはPGT-Aも検討するべきでしょう。
年齢的にもあまり残された時間は多くはありませんから、検査についても積極的に検討してほしいですね。

・治療との向き合い方について

ご主人が治療方針に対してあまり納得がいっていないようです。
「なぜもっと・・・」というくだりについてですが、主治医としては1回目の妊娠(治療)が比較的順調だったことから、あまり外科的(侵襲的な)な治療に踏み切れなかった可能性が高いと推察します。
また、確かに卵管切除によって確実に胚移植が成功する確証はありませんから、さらに手術を決断しづらく、結果的に胚移植を継続し、不成功が重なってしまったのではないでしょうか。
上述のように、卵管切除によって、子宮内環境が改善が期待できることから、ご主人が言われるような「確証」はないかもしれませんが、現状を打破できる「可能性」があるのではないでしょうか。
また、手術以外の方向からのアプローチ(子宮内検査、子宮鏡、ERA等検査)も有効かもしれません。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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