【Q&A】過去に中絶~長島先生

長島先生にご意見をに聞いてきました。

花小金井レディースクリニック 長島 隆 先生 

1998年 北里大学医学部医学科 卒業、1999年 慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室 入局、2018年 医療法人社団 生新会 木場公園クリニック 副院長。医療相談、生活習慣のアドバイス、診療以外の悩み事などにも可能な限り対応できる、患者さまに寄り添った医療を提供している。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
トントンさん(41歳) 
28歳の時に、望まぬ妊娠をしたため、中絶手術を行いました。
現在は違うパートナーと結婚しましたが、性交障害のためにタイミングを取れず、体外受精しました。
ただ、低刺激でも採卵できたのは1個のみです。
過去の妊娠経験があっのも、年齢を重ねると不妊になるのでしょうか。
また、原因不明の不妊と比べたら、移植すれは陽性が出やすいとかはありますか?
それと、過去の中絶についは、不妊治療クリニックに申告したほうがよかったのでしょうか?
旦那に知られたくなくて、伝えていません。

①    低刺激で採卵できたのは1個のみだったそうです。排卵誘発法の選択や、採卵数を増やす方法など先生のお考えを聞かせてください

トントンさんの場合、初回の体外受精を低刺激で行い採卵数が1つであったため、私であれば次回の調節卵巣刺激は中刺激で行うと思います。つまり、排卵誘発剤を月経2〜3日目から5日間内服した後、卵胞発育作用のあるゴナドトロピン製剤を2日に1回打つことで、卵胞発育を目指す方法です。AMHが年齢に比して低い方は、高刺激を行っても中刺激を行っても、最終的に獲得できる採卵数は変わらないことを、過去の学会で発表しております。よって、費用のかかる高刺激での採卵を行って受精卵の獲得を目指すよりも、そこまで費用のかからない中刺激を3回ほど受けて、獲得できる受精卵の合計数を増やした方が良いと思います。そして、獲得した受精卵を全て凍結保存したのち、グレードの良いものから順に移植していくと良いでしょう。採卵ごとに胚移植を行っていく方法では、良好な受精卵を獲得するまでに時間がかかってしまいます。女性は38歳を過ぎると、年齢の影響を受けて卵子の老化により加速度的に妊娠率が低下してしまうため、トントンさんの場合もご年齢を考慮すると、何よりもまず良好な受精卵を獲得することを目指した方が良いと思います

②    妊娠経験があっても、不妊になる可能性はありますか?また、可能性がある場合はその理由を教えてください。

妊娠経験があっても不妊症にあることは殆どありません。ごく稀ですが、中絶手術を受けた影響で受精卵が着床する子宮内腔がくっついてしまい、不妊症となることがあります(アッシャーマン症候群)。反対に、この異常がなければ中絶には至りましたが、過去に妊娠したということになります。よって、妊娠は可能であるため、医学的な用語で言うとトントンさんは原発性不妊(※)ではないため、十分妊娠できる可能性があると言えます。

※原発性不妊:1回も妊娠経験がない人、現代医学で原因を明らかにできない不妊(⇔続発性不妊)。

 

③    過去の中絶について、主治医の先生に伝えたほうがよいですか?

特に主治医の先生に伝える必要はないと思います。前述のアッシャーマン症候群は、体外受精で獲得した受精卵を子宮に移植する胚移植の際に、難渋することがあります。よって、もし前述のアッシャーマン症候群がご心配でしたら、御主人に知られてしまわないように十分配慮していただくことを主治医に伝えたのち、子宮鏡で子宮内腔を調べてもらうことも良いと思います。

④長島先生からのアドバイス

トントンさんの気持ちを考えると言い難いのですが、正直に申し上げてトントンさんの場合は、妊娠しにくい原因として「年令」が大きな要因になっていると思います。よって、不妊治療は最も妊娠率の高い体外受精で行い、できるだけ慎重に、そして主治医と十分に意思疎通を図って、早めに進めていく方が良いと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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