かしわざき産婦人科、柏崎祐士先生の妊活教室
Lesson4高度不妊治療について
体外受精や顕微授精などの高度不妊治療は、今受けることができる最高峰の不妊治療です。タイミング療法や人工授精などの一般不妊治療とどう違うのか、詳しい治療内容や費用面、受ける前の心構えについてなど、かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に教えていただきました。
ドクターアドバイス
●子宮にできた卵管閉塞は内視鏡下で治療します。
●体外受精は卵管で起こることを補助してあげる治療です。
●副作用を起こさず、5、6個採卵していくのが理想。
●治療前に計画を立て、ご夫婦の足並みを揃えておくこと。
高度不妊治療とはどのような治療になりますか?
不妊治療において、タイミング療法や人工授精は一般不妊治療、体外受精もしくは顕微授精はいわゆる高度生殖補助医療(ART)といわれています。人工授精は精子を採って直接子宮に注入する治療法ですが、患者さんによっては少しハードルが高く、「人工」という名前のイメージからこれも高度不妊治療ととらえる方もいるようです。
また、体外受精に入る前の段階で多囊胞性卵巣症候群の方の卵巣に穴を開ける、卵管の詰まりや癒着を取るなど、外科的療法も患者さんにとっては高度な治療になるのかもしれません。
ではARTとはどのような治療なのか。体外受精は卵子を体の外へ取り出して、ご主人の精子と一緒にして受精させ、そこから3日から5日間培養して受精卵をつくり、子宮に戻してあげる療法です。妊娠というのは、排卵して、卵子が卵管の中で精子と出会って受精し、細胞分裂を繰り返しながら子宮に向けて移動し、子宮内膜に着床するという過程を経ます。その卵管で行われることを少し助けてあげましょう、というのが体外受精なのですね。
一方、顕微授精は精子の数が極端に少なかったり、精子が卵子の中へ入っていかないという場合に適応になる治療法です。顕微鏡で見ながら注射器のような器具を使って精子を1つ吸い上げ、卵子に直接注入。受精そのものを助けてあげるという方法です。
なぜ卵巣刺激をしなくてはいけないのでしょうか?
ARTでは卵子を採るというのが重要な過程の一つになります。自然な形で1個の卵子を採るというのが一番理想的なのですが、それではなかなかうまくいきません。成熟した卵子が採れて精子が中に入ったとしても、そこから培養して着床する受精卵の段階まで生き残るのは半数です。ですから、卵巣を刺激して複数の卵子を採るように目指していきます。
卵巣を刺激する方法にはいろいろなバリエーションがあります。自然に排卵をしてしまうと卵子は採れませんから、注射薬や内服薬を使って排卵を止めつつ、卵子がうまく育っていくように調節していきます。
10個以上など、採る卵子の数は多ければ多いほど良いように思いますが、それだとお腹が腫れて卵巣過剰刺激症候群を起こしてしまうこともあります。できれば薬の副作用が起こらず、5、6個採卵できることがいいのではないかと思います。どの方法を選ぶかは年齢や体質など患者さんの条件によって異なりますし、一度やってみないとわからないという部分もあります。主治医がその方に合ったやり方をオーダーメイドしてくれると思いますから、事前によく説明を聞いたうえで決めていきましょう。
高度不妊治療を受けるうえでの注意点を教えてください
ARTで妊娠する確率はだいたい10%程度。低いと思われるかもしれませんが、健康なご夫婦が自然に妊娠する確率は30%くらいですから、決して低くなく、希望をもたれてもいいと思います。
タイミング療法や人工授精を続けても結果が出ない方、原因不明の不妊の方、年齢が高くて自然な形では妊娠が厳しい方は高度な治療にチャレンジしてもいいと思いますが、一般不妊治療と比べさまざまな面でハードルが高くなるのは事実です。治療費をはじめ、治療にかかる時間や手間など、ご自身にかかる負担が大きくなることから、それらがストレスとなり、場合によっては、夫婦仲がギクシャクしてしまうケースも見受けられます。
スムーズに治療していくためには、説明会などに参加して事前に内容をきちんと把握し、仕事との両立や金銭面、続ける期間など、ある程度計画を立てておくことが重要です。ご夫婦でよく話し合って情報を共有し、治療を始める前からお二人の足並みを揃えておくことが大切でしょう。
前向きに治療していくのは望ましいことですが、「これをしなきゃ、あれをしなきゃ」と頑張りすぎないこと。治療が生活のすべてになったら苦痛になってしまいますから、気を抜く時間を作るなどリラックスして臨んでいただきたいです。