卵子のアンチエイジングに必須!? いま注目の成分PQQとは

ミトコンドリアの活性化や細胞の抗老化に対する効果が期待されているPQQ( ピロロキノリンキノン)。いま不妊治療の分野で注目されている理由について、英ウィメンズクリニックの十倉陽子先生に伺いました。

英ウィメンズクリニック 十倉 陽子 先生 2005年関西医科大学医学部卒業後、東京北社会保険病院で臨床を受ける。その後、帝京大学医学部附属溝口病院へ入局。母子愛育会総合母子保健センター 産婦人科新生児科、帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科を経て、2011年12月より英ウィメンズクリニック勤務。2012年8月より女性医学部門部長就任。

抗酸化のはたらきをもつPQQ は哺乳類の発育に必須の成分

私たちの体内では消化、吸収、代謝を助けるいろいろな酵素が働いています。その酵素に必要な物質の一つがビタミンです。PQQ は、ヒトの体内や植物、バクテリアなどに存在し、ビタミンに似た働きをする物質です。なかでも活性酸素を抑制する高い抗酸化作用をもち、ミトコンドリアの活性化や細胞の抗老化に対する効果が期待されています。PQQ は哺乳類の成長発達や生殖、免疫機能に必須の物質としても知られ、不足するとさまざまな病気になることがわかっています。たとえば、マウスの実験でPQQ をまったく含んでいない食事を与えると、生まれてくる子どもの数が減少したり、毛並みが悪くなることが認められています。また、ヒトではアルツハイマー病症などにかかわる脳や心機能にも影響するという報告もあります。

アンチエイジング世代の不妊治療をサポート

おもに不妊治療を必要とされる世代は40代以上の方です。平均寿命は年々延びていますが、赤ちゃんを授かることができる生殖年齢は、残念ながら100 年前とほぼ変わっていません。現代の女性は、昔の40代の女性であれば寿命を終えていてもおかしくない年齢で妊娠・出産をめざしていることになります。この世代の妊活にアンチエイジングは必須です。

一般的に卵巣の機能は30代後半からゆるやかに低下しはじめ、40代になると急速に下降して卵子の質などに影響を及ぼします。その原因の一つとされるのが、細胞のエネルギーをつくり出すミトコンドリアの機能の低下です。卵胞の成長にはミトコンドリアがつくり出すエネルギーを利用しますが、その過程では同時に老化の原因物質である活性酸素が発生します。

年齢が若い方は、ご自身の体内で活性酸素を減らす抗酸化物質をつくれますが、年齢が高くなるとそれが難しくなります。そのため、不妊治療はまさに活性酸素との戦いになります。PQQ は高い抗酸化力で酸化ストレスから卵胞を守り、質の良い卵子を育てるための新たな強みになると思います。

また、哺乳類の胎盤の実験では、PQQ などの抗酸化物質によって、血管を拡張する一酸化窒素が増加し、胎盤の発育が良くなるという報告もあります。ヒトへの研究は始まったばかりですが、これから体全体の抗酸化や血流の増加作用も期待できるかもしれません。

卵子の質が気になる人にPQQ のサプリを提案

PQQ は、母親の母乳やふだん摂っている食品(ココアパウダー、納豆、ピーマン、豆腐)などにも含まれていますが、その量はごくわずかです。効率的に体に取り入れるためには、サプリメントを利用するのも一つの方法です。PQQ は水に溶けて腸で吸収されやすいため、細胞の中のミトコンドリアに届きやすいといわれています。

当院では治療と並行してPQQ のサプリメントを積極的におすすめしています。40歳以上の方には治療の開始とともにご提案することもありますが、多くは年齢にかかわらず、1回目の採卵で卵子のほとんどが空胞や変性卵の方、または卵子は採れても受精にいたらない、胚盤胞のグレードが良くない方を対象にしています。

卵巣内で卵胞が育つまでには2〜3カ月かかります。40代以上の方は採卵と移植を繰り返すことが多いため、基本的には長期間続けて飲んでいただくようにしています。また、不妊治療では採卵の瞬間にもっとも酸化ストレスが増加するといわれています。患者さんの状態によっては採卵周期の前周期から摂取していただくこともあります。

最近はメラトニンやDHEA など、すでに複数のサプリメントを取り入れている方がほとんどです。PQQ はその方の卵子の状態や目的、費用など、ご相談内容に合わせて優先順位を相談しながら、納得していただけるご提案をしています。これからPQQ のサプリメントの臨床データを解析していく予定ですが、当院の妊娠最高年齢がどこまで更新されていくかに期待したいと思います。

酸化ストレスをつくらないライフスタイルを心がけよう

人によっては変えられない遺伝的な要素もありますが、治療のほかにも生活習慣や食習慣、サプリメントなどで改善できることもあると思います。特に不妊治療をされている方の多くは、年齢的にアンチエイジングが必須の世代です。「複数のサプリメントを飲みすぎなのでは?」とご心配されずに、PQQ などの抗酸化成分を前向きに取り入れながら治療されていくといいと思います。

一方で、サプリメントに頼りすぎず、睡眠や食事の質をととのえて、ご自身で酸化ストレスをコントロールしていくことも大切です。たとえば、マウスの実験では毎日選択している食品によって腸内環境が変化し、活性酸素が発生しやすい食品を多く摂ると、腸管から老化物質が発生しやすくなることがわかっています。また、睡眠不足によって高血糖や高脂血症などの代謝異常のリスクも高くなります。

毎日の生活バランスが乱れてしまうと、せっかく良いサプリメントを飲んでいても十分な効果を発揮できなくなります。まずは新しい酸化ストレスを生み出さない健康的なライフスタイルを心がけ、そのうえでサプリメントの力を借りて、妊娠をめざしましょう。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。