生殖医療ガイドラインを男性不妊専門医が解説!

不妊治療は女性主体で進むケースがほとんどですが、不妊の原因は男性と女性で50:50。適切な治療法を選んで妊娠出産に結びつけるためには、男性側の検査や治療も大切です。そこで、日本生殖医学会が作成した生殖医療ガイドライン2021をもとに、男性不妊の泌尿器科的検査や治療の必要性について、銀座リプロ外科・東邦大学泌尿器科教授の永尾光一先生に解説してもらいました。

永尾光一先生(銀座リプロ外科・東邦大学泌尿器科教授)昭和大学医学部形成外科学講座研修医、川崎病院形成外科部長、博慈会記念総合病院泌尿器科部長、カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学等を経て、東邦大学医学部泌尿器科教授に就任。精管、動脈、リンパ管、神経など“大事なもの”を1本1本確認しすべて残すことができる日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術「ナガオメソッド」を開発するなど、男性不妊で悩む多くの患者に、より低侵襲で早く確実な治療を提供。日本形成外科学会専門医、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

<男性不妊に関わる主なガイドライン>

 

  • 重度男性不妊症例の場合、泌尿器科的検査を行う
  • 非閉塞性無精子症で生殖補助医療を予定する場合はMicro-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)を行う
  • Micro-TESE前にはY染色体微小欠失検査を行う
  • PDE5阻害薬は、勃起障害を伴う男性不妊症に対して有効である

 

重度男性不妊症の泌尿器科的検査とは、どのような検査ですか?

 

男性の不妊原因を特定し、もっとも効果のある治療法を選択できる検査です。

泌尿器科的検査は、大きくわけて3つ。1つ目は陰部の視診と触診です。視診は精巣サイズの測定(正常なサイズは14cc以上)、精巣上体の大きさや硬さ、圧痛・違和感の有無を診ます。精管の触診では太さと欠損の有無、陰毛・陰茎の発育状態も確認します。2つ目は精巣腫瘍、精液瘤、精巣水腫、精巣内石灰化の有無などを確認する陰嚢のエコー検査。精巣上体の観察と精索静脈瘤の診断も行います。3つ目は無精子症に対する染色体検査とY染色体微小欠失検査(AZF検査)。これは採血で行います。

10分程度の診察とエコー検査により、婦人科で行う精液、ホルモン、感染症検査では見つけられない男性の不妊原因を特定できるため、精索静脈瘤手術や精路再建術、ホルモン治療など、もっとも有効な治療の選択につながります。

 

Micro-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)について教えてください。

 

精巣内の精細管をくまなく探し、正常な精子を採取する技術です。

 Micro-TESEは、全男性の約1%に存在する無精子症のうち、非閉塞性無精子症の男性が生殖補助医療を希望した場合に行います。精巣内をくまなく検索して、太く白く蛇行している良好な精細管が見つかれば管の中の精子を探し、採取できれば顕微受精を行います。正常な精子が見つかる確率は約30%です。

AZF検査が必要な理由を教えてください。

 

結果の出ないMicro-TESEによる、体への負担を防ぐためです。

染色体には常染色体44個と性染色体2個(XXとYY)があり、男性のY染色体上に一部分の欠損(AZFa領域、AZFb領域、AZFc領域など)が見られることがあります。このうち、aとbが欠損している場合はMicro-TESEを行なっても精子は回収できません。事前にわかっていれば結果が出ない手術を避け、患者さんの負担を回避することができます。

勃起障害を伴う男性不妊症に有効なPDE5阻害薬とは?

 

いわゆるED治療薬。約90%の有効性が認められています。

日時指定のタイミング法や精液検査を繰り返すなど、不妊治療の長期化によって心因性の勃起障害(ED)は起きやすくなります。そのような場合にバイアグラやシアリスなどのPDE5阻害薬が有効。「薬で勃起させているから愛情を感じられない」という女性も多いのですが、そもそも性的刺激・性的興奮が起きているからこそ効果がある薬です。当院のデータでも薬を飲むだけで挿入頻度、膣内射精頻度が増え、自然妊娠のケースも。副作用もほとんどありません。

 

まとめ

「生殖医療ガイドライン2021」の「重度の男性不妊の場合は泌尿器科的検査を行う」は、重症と診断されてもいきなり体外受精・顕微受精をするのではなく、まずは泌尿器科で検査を受けることを強く推奨しています。軽症も同様で、もっとも有効な治療法を選択するための検査であり、結果として女性の負担を減らすことにもつながるので、男性はぜひ、泌尿科的検査を受けてください。

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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