ホルモン補充のために貼っていたエストラーナテープ…
期待していたような結果にならなくて、心配。
滝口修司先生に聞いてみました。
滝口修司先生 山口大学医学部医学科卒業。山口大学医学部附属病院、済生会山口総合病院、正岡病院などの勤務を経て、2012年より浅田レディースクリニックに勤務。2017年1月、故郷・広島の玄関口である広島駅前に「IVFクリニックひろしま」を開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
奏さん(41歳)
今年2月に体外受精・顕微受精をするため生殖専門機関を受診。
人工授精3回行い妊娠に至らず、8月に顕微受精をするため採卵しました。
採卵結果は7個。成熟した卵子は6個全て顕微受精を行い、胚盤胞培養までが4個。凍結胚は3個でした。
採卵後の生理周期はお休みし1ヶ月空けた別の周期で胚移植のため貼り薬エストラーナを使用、ホルモン補充周期に入りました。
この時にエストラーナを使用した枚数は 3枚が3回、4枚が3回、6枚が1回です。
エストラーナを使用し超音波検査をしたところ卵胞がありました。
通常の周期より大きく25mm。3日後にもう一度超音波検査をしましたが35mmと大きくなっており胚移植は中止になりました。
大きくなってしまった卵胞は排卵する事はなく、卵巣が吸収するまで何も出来ないのでしょうか?
エストラーナを使用していても卵胞が出来てしまう事は稀でしょうか?
ご意見を聞かせてください。よろしくお願いします。
エストラーナテープを貼付していても、
卵胞が発育してしまうことはあります。
その頻度は高くはありませんが、稀というほどでもありません。
通常は、
エストラーナテープにより血中エストラジオール値が上昇し、
下錐体からの
FSHの分泌を抑制するため、
卵胞が発育することはありません。ただし、
卵巣予備能の低下などのため低エストロゲン状態となっている場合
、血中FSH値が高値となっている可能性があります。
この状態でエストラーナテープを貼付すると、
血中FSHが適度に低下して、
逆に卵胞発育が促されることがあります。
今回の「奏」さんの場合、前周期からの遺残卵胞が何らかの原因で退縮できないまま逆に少し大きくなった可能性と、今周期に卵胞が発育してしまった可能性とがあります。前者はおそらく今周期の月経2日目頃に受けられた超音波検査で除外してもらっていると思うので、やはり後者であろうと思います。
この場合、選択肢は5つあります。
(1) 子宮内膜が十分な厚さに発育している場合、
血中
プロゲステロン値を測定し、これが上昇していないならば、
翌日から黄体補充を開始して融解胚移植の日程を設定します。
プロゲステロン値が既に上昇していた場合は、
今周期での胚移植は中止します。
(2) 子宮内膜が十分な厚さに発育しており、しかも血中プロゲステロンが上昇していない場合、ホルモン補充周期をあきらめ、hCGを投与し、排卵周期としての融解胚移植に設定し直すのも一法です。
(3) もちろん、今周期での融解胚移植をあきらめて、仕切り直すのも一法です。この場合、ブセレリンなどのGnRHアゴニストの点鼻投与を開始して、次周期ではGnRHアゴニストを併用したホルモン補充周期下融解胚移植を計画します。
(4) または、GnRHアゴニストは併用せずに今回と同じホルモン補充周期で融解胚移植を実施するのも、必ずしも悪くはありません。ただし、卵胞発育を反復する可能性は否定できません。「奏」さんの場合、AMH値が1.14ということですので、これが直近の値ならば、FSH基礎値が上昇しているとは限らないので、次周期も同じ治療でも卵胞発育を来さずに済む可能性はあると思います。もしAMH値がさらに低下しているのであれば、GnRHアゴニストの併用が無難ではないかと思います。
(5) 血中エストラジオール値が十分に高く、良好な卵胞が発育したと予想できる場合、hCG投与などのトリガーを計画して採卵することも可能です。