流産を繰り返すのは辛いものです。
同じ経験をしないためにも、何かできることはないのでしょうか?
浅田先生に聞いてきました。
さやさやさん(36歳)
元々多嚢胞性卵巣症候群で、妊娠しづらい体質でした。
体外受精へステップアップして、2回移植しました。
2回とも着床はしましたが、1回目は化学流産、2回目は子宮外妊娠の疑いもしくは流産手術というところです。
着床はするのですが、その後hcgの数値が上がりません。
もう1回移植できる凍結胚があるので、頑張りたいのですが、お休み期間中にできる対策はありますか?
また着床するという事は、妊娠できる可能性はありますか?
何か病気を疑ったり、検査をした方が良いですか?
AMHが3.0以上、とありますが、以上というのはいくつなのでしょうか。また、多嚢胞性卵巣症候群で腹腔鏡(ラパロ)の手術をしたのでしょうか。
元々ドリリングといって、ラパロで多嚢胞性卵巣症候群の手術をするというのは昔からあります。ただ卵巣予備能が悪くなるので、不妊治療専門医としてはあまりお勧めではありません。
現在では、多嚢胞性卵巣症候群の方も卵巣過剰刺激症候群になることなく、非常に安全に、たくさんの卵子を1回の採卵で獲得することができるようになりましたので、ラパロの手術はほとんど必要ではないのではないかと、私は思っています。
多嚢胞性卵巣症候群の方は、卵巣予備能が低く、卵が少ない、ということではなく、卵の発育が途中の段階で止まっている状態になります。
他の哺乳類では数個ずつ排卵するところ、人の場合は1個のみ成熟させて、残りは、成熟できる卵をわざとしぼませ、単一の排卵に持っていくという仕組みがあります。それがあまり上手くいかず途中で卵胞発育が止まってしまう、というのが多嚢胞性卵巣症候群の特徴です。
そのため、月経周期はきちんと排卵せず長くなる傾向にあり、その傾向は若いうちが強いです。しかし、高齢になってくると段々と正常に近くなってくる方が多く、高齢になっても卵子がたくさん残っているので、体外受精等の不妊治療をしていく上では、とても有利になります。
ところで、hCGの数値が上がらない、と言われていますが、hCGの数値が上がらないのではありません。着床障害という用語が世の中にはありますが、私は疑問に思っています。胚盤胞で移植したとしたら、翌日または翌々日にたいていの卵は着床しており、それがどこまで成長していったかということで、妊娠かそうでないかが決まります。
血中濃度で測ったhCGが11や30ということについて、30なら尿検査でプラスの判定になりますが、hCGが少しだけ出ることはよくあります。そのくらいの値のときに成長が止まった、ということです。hCGが少ないのをどうにかすれば順調に育つ、ということではなく、卵を移植して、それがどれだけ子宮の中で育っていったか、ということで妊娠となります。それが5、6週間で成長が止まれば流産となりますし、そのままずっと成長し続ければ出産となります。そのようにご理解ください。
お休み期間中にできる対策は、とありますが、移植を繰り返してもその都度子宮内膜は入れ替わりますので、なぜお休みしているのかわかりませんが、治療を休んで妊娠率が上がることはありません。多嚢胞性卵巣症候群の卵巣刺激というのは、不妊治療専門の医師の力量が一番表れるところです。より安全に1回の採卵でできるだけ多くの受精卵ができる、というのを実現できれば、より妊娠できる可能性が上がります。
36歳のさやさやさんの場合は、平均で10~20個以下の卵子の数で、1人の赤ちゃんが生まれる、ということがわかっています。ただ平均ですので、ご夫婦お二人の遺伝子の組み合わせによっては、もっと少ない数でも赤ちゃんを授かるかもしれませんし、もっとたくさんの卵子が必要になる場合もあります。
さやさやさんの妊娠、着床ということに関する理解、イメージが、この回答で少しでも深まったなら幸いです。