治療やサプリの効果を上げるにはストレスのマネジメントも重要
ジネコのユーザーさんから寄せられる声のなかで多いのが「採卵数が少ない」「胚盤胞に育たない」「陰性が続く」など、卵子や着床にかかわるお悩み。そこで、採卵率や着床率を上げるための一つの手助けになる検査や治療、おすすめのサプリメントについて、レディースクリニック北浜の奥裕嗣先生に教えていただきました。
着床と不育症の関係に着目し不育症検査を応用した検査も!
当院では、着床障害が不育症と同じ病態で起こるのではないかと考え、着床が難しい方には、不育症検査を応用した検査を行っています。検査の結果、たとえば子宮の血液循環が良くない方には、胚移植の日からアスピリンやヘパリンという血栓を予防するお薬を投与することにより、着床率が上がることがあります。
卵子の質は良くても着床しにくい方には、子宮内膜の環境を調べるERA、子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎の検査を始めました。これから症例数を増やして効果を検証し、良い結果につながることを期待しています。今後は、胚の染色体異常を調べる着床前胚染色体異数性検査(PGT ― A)も有効な検査になると思います。
また、体外受精は実施することにより不妊の原因が診断できる究極の診断法でもあります。正常な卵子が採れた場合、分割胚から胚盤胞までの培養環境で、一番良いのは卵管の中、次に良いのが体外培養、一番好ましくないのは子宮の中にとどまることです。
なかでも二段階胚移植は着床障害に有効とされる治療の一つで、1周期の移植で分割胚と胚盤胞を2回に分けて移植します。メカニズムとしては、1回目に移植する分割胚が子宮内膜を刺激して妊娠しやすい環境をつくり、2回目に移植する胚盤胞が着床しやすくなると考えられています。単一の胚盤胞移植でうまくいかない方の約45%が妊娠したというデータもあります。
通常、分割胚は1番手のグレードではなく、2〜4番手のものを移植しますが、それが卵管の中に行くことで一番良い培養ができて、胚盤胞になって着床するケースもあります。また、分割胚を移植してもうまくいかない方では、子宮の中にとどまるケースが30〜40%あるといわれています。このような場合は体外環境で育てた胚盤胞の移植が有効になる場合もあります。
サプリメントや漢方の摂取とカウンセリングの活用が有効
体外受精の妊娠率を上昇させるため、サプリメントを使用する場合があります。なかでも、メラトニンは胚の質が良くない方や、到達率の低い方に対して手応えを感じています。たとえば、体外受精の場合、採卵前周期から採卵の前日まで1日1錠摂取すると、良好な胚盤胞になる率が上がり、約40%の方が妊娠されています。
同じくレスベラトロール(天然ポリフェノールの一種)にも抗酸化作用があり、マウス実験では出産率が上がり、流産率が減ったという報告もあります。年齢が高い方の卵子の染色体異常については、神の領域に近い治療ですから、一つの助けになるかもしれません。
また、当院ではオリジナルの漢方薬(当帰芍薬散)も処方しています。漢方のなかでも当帰芍薬散はマウス実験で、血管の抵抗を下げ、血流を改善させる効果が証明されています。これによって良好な卵子(受精卵)ができやすくなる、子宮の血流を促して着床しやすくなる、流産のリスクが下がるという報告があります。
採卵数を増やし、質の良い胚を育てるためには、できるだけストレスをためないように治療を受けていただくことも大切です。ストレスは体内のNK 活性を過度に増加させ、着床障害や流産の原因になるといわれています。NK 細胞活性は気持ちをほぐすことで低下することがわかっており、たとえば「テンダーラビングケア」と呼ばれるカウンセリングは、不育症治療の一つです。検査や治療、サプリメントとともに、カウンセリングも活用して、良い結果につなげてください。
卵子と着床について先生のお考えを聞きました!
着床に有効と思われる検査や治療は?
子宮内フローラ 、 ERA、PGT-A、 慢性子宮内膜炎、甲状腺機能、二段階胚移植
AMH の数値と卵子の質は相関していると考える?
いいえ
年齢以外の理由で、卵子の質が良くない人の共通点は?
共通点はないと思いますが、あえて挙げるとすればインスリン抵抗性のある重度のPCOS の方です。このような方の約10%に、卵子はたくさん採れるのに、胚盤胞に一つも育たないケースが見受けられます。
採卵や高グレード胚盤胞ができない人へおすすめしているものは?
サプリメント、鍼灸、サプリ、ストレスのコントロールを目的としたカウンセリングの利用
クリニックでおすすめしているサプリは?
プラセンタ、 DHEA 、メラトニン、レスベラトロール、 亜鉛、 L- カルニチン