胚(受精卵)移植には、受精後2~3日の初期胚を移植する方法と、着床前の状態まで育てた胚盤胞を移植する方法とがあります。一般的には胚盤胞のほうが妊娠率は高いとされますが、初期胚移植が適するケースもあるそう。あいだ希望クリニックの会田拓也先生に教えていただきました。
刺激方法について、先生のご意見を伺えますか
卵巣刺激法には大きく高刺激法、低刺激法、自然周期法があります。高刺激法はたくさんの卵胞が採れるという利点がある一方、人工的に卵子を成長させることから卵巣への負荷が大きく、卵子の質を下げる可能性もあります。特に卵巣の機能を示すAMH値が低いとどうにかして卵子を育てたいと高刺激に意識が向きがちですが、卵巣の状態を考えるとむしろ自然周期法のほうが望ましいこともあります。当院は自然周期法を専門としていますが、AMHが低くても30代半ばぐらいまでであれば、卵子の質はそれほど低下していませんから、FSHを測った上で採卵すれば自然周期法でも十分によい卵子が採れ、妊娠に結びつくと思われます。
多核受精の原因は何でしょうか? 顕微受精のほうがよいでしょうか?
多核受精とは受精時に2つ作られる前核が3つ以上できてしまった状態をいいます。原因はいくつかあり、その一つが卵子を覆う透明帯という組織の脆弱さです。透明帯が柔らかいと精子が一度に複数入り込んでしまうことがあり、それで多核受精をもたらすのです。多核受精を繰り返す方はこの卵子の性質が関係している可能性があるので、体外受精よりも複数の精子が入り込まない顕微授精を選択されたほうがよいかもしれませんね。
初期胚移植はあまり意味がないでしょうか?
初期胚の移植と胚盤胞の移植を比較すると、確かに胚盤胞のほうが妊娠率は高いです。しかし、必ずしも分割胚が胚盤胞まで成長するとは限りませんし、そうした分割胚でも移植すれば妊娠につながる可能性があります。ですので、一概に初期胚移植がダメとは言い切れません。ただ、初期胚の移植を何度か繰り返しても着床に到らない場合は、もしかしたら卵管や子宮内の環境に何らかの問題があるかもしれません。その場合は胚盤胞まで待って移植するのが望ましいでしょう。当院では、移植をする際はホルモン値や内膜の状態をみます。移植に適さない状況だと判断された場合は移植を先延ばしにし、移植胚は胚盤胞に育てるか、凍結胚にして次の移植のタイミングを待ちます。それから、医療機関のなかには「タイムラプス」という装置を用いて胚培養を行っているところがあります。タイムラプスは培養器から取り出さずに胚を観察でき、胚にストレスがかかりにくいため、胚盤胞に成長しやすく、妊娠率が5~10%上がると言われています。胚盤胞移植を強く望まれるのであれば、こうした装置を扱っている医療機関に転院するのも一案だと思われます。
その他、できることや打開策はありますでしょうか?
4年にわたる不妊治療で、いろいろと工夫をなさっているのでしょう。ただ、それがかえって状況をこじらせているようにも思えます。例えば漢方薬やサプリメントの使用ですが、詳細には述べませんが専門家の意見としてはイノシトールやメラトニン、DHEAは摂らなくてもいいと考えます。何より治療のことばかり考えず、リフレッシュできることを見つけて実践するなど、ストレスを溜めない生活を心がけてほしいと思います。