卵管因子の不妊治療もよく耳にする悩みですね。
今回は、卵管水腫の方からの質問です。手術するべきか?しなくてもいいのか?
浅田先生にお聞きしました。
おニャン子クラブさん(29歳)両側卵管水腫と診断をうけ、手術をしたらいいかどうか迷ってます。 今は採卵が終わりお休み周期です。
私が通ってるクリニックの先生はあまり 手術を勧めていませんが、ネットで調べたりジネコの質問会でほかのクリニックの先生は 手術をすれば確率が4倍あがると言っていたので、体外受精の確率が上がるのであれば手 術したいと思ってます。
しかし、もちろん手術をするのも怖いですしお金もかかるのでやらなくてもいいのならばやり たくはないです。
現在凍結8個あるので1度移植をしてダメだったら手術を真剣に考えてます。 手術はした方がいいでしょうか。
両側の卵管水腫、との診断について、いつからの卵管水腫なのか、というのが一つ疑問です。元々卵管水腫があって卵管が閉塞していたら、タイミングや人工授精で妊娠できなかったはずです。ですから、突然そのようになったのか疑問に思います。
手術をすれば体外受精の確率が4倍に上がる、ということについて、そのような論文があるのかもしれません。ただ、卵管水腫の程度にもより、生殖医療の世界では様々なデータがありますが、いきなり1だったものが4になる、という説明をしたことは、私は一度もありません。
なぜ卵管水腫があるといけないか、というと、炎症性の液体が着床の時期に子宮の中へ戻ってくるためで、妊娠率が少し減ってきます。それは、何もない状態を1とすると、0.7~0.8に減る、と認識しています。
他の動物と違ってヒトの場合は、着床の時期を過ぎると、受精卵が子宮内膜の中に入り込みます。その着床の一時期だけ炎症性の液体が悪い作用をしなければよいため、当院では手術をしていません。胚移植の直前に水腫へ針を刺し、中身を抜いた後、通常通りに移植しており、それで一定の治療成績を得ています。
卵管水腫の手術にはいくつかの方法があり、卵管を切る、取る、クリップで留めるなどですが、これらの手術をしたら体外受精の確率が4倍になる、というのを鵜呑みにしない方がよいでしょう。
世の中のデータというのは、何百、何千と膨大なデータからいろいろな結果が出て、それらを総合して初めて一つのエビンデンスになり、認められるものです。一つ、二つの論文があるからといって、科学的に正しいとは言い切れません。