流産、死産を経てタイミング法を継続中。今の治療で大丈夫?
いながきレディースクリニック稲垣 誠 先生 1994 年、浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院、鹿児島市立病院、聖隷沼津病院などで産婦人科医の経験を重ね、2012 年、不妊治療専門施設「いながきレディースクリニック」を開院。「お一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの患者さまに合った最適な治療を心がけています」。
相談者 : atsuさん(29歳)2018 年10 月から自己タイミング法を始め、12 月に妊娠し6 週で流産。2019 年8 月から不妊治療を始め、内診による自己タイミング法を行い、12 月に妊娠。翌年4 月に22 週で死産。夫の精液検査、私の卵管通水検査、各種血液検査で異常はありませんでした。2020 年7 月から再びタイミング法を開始しましたが、未だ妊娠に至りません。主治医は私がまだ若いから…と踏み込んだ治療は考えていないようです。しかしなかなか妊娠できず、現在の治療だけでいいのか不安です。
治療歴や検査内容で気になる点はありますか。
稲垣先生●文面だけでは流産、死産の原因がわかりづらいですね。22週の頃の死産はパルボウイルスB19、いわゆるリンゴ病感染の可能性もありますが、当時に遡って調べることができないので断定はできません。この時期だと子宮頸管無力症や子宮内感染症、子宮の形態異常や筋腫なども考えられます。atsu さんがすでに子宮内フローラ検査や不育症検査を受けられていて、その結果も教えていただけると詳しいアドバイスができるのですが。一般的には、流産を2回経験された方の不妊治療による最終的な妊娠率は80%近いといわれています。ですから、ぜひ希望をもって治療を続けていただきたいです。
現在の治療に不安がある場合、セカンドオピニオンを受けたほうがいいのでしょうか。
稲垣先生●セカンドオピニオンを受ける前に、まずご自身の妊活の情報、状況を整理し、時系列で検査内容や結果をまとめておくと、医師もアドバイスがしやすくなります。検査を受けたら必ずクリニックからデータを受け取り、自分で保管することも忘れないでください。また、これはご夫婦で考えていただくことですが、家族計画を明確にしたうえで不妊治療を始めてください。高齢だからとにかく早く産みたい、30代のうちに2人産みたい…など妊娠・出産の希望は人によって異なります。当院では初回のカウンセリング時に、家族計画や妊娠・出産についての細かな要望をじっくりお聞きしたうえで、最適な治療を行うようにしています。
踏み込んだ治療を希望される場合、どんな治療が考えられますか。
稲垣先生●主治医からまだ若い…と言われているようですが、当院ではあまり年齢にはこだわりません。同じ30歳でも初めて治療に臨む方と、すでに治療経験のある方では治療への要望が異なります。大切なのは、ご自身が望み、納得できる治療を受けられることです。そうすることでご自身が主体的に治療にかかわれるようになります。タイミング法の次は人工授精や体外受精も視野に入ってきますが、不妊治療は一方通行のステップアップではありません。体外受精を経て、再び人工授精を行って妊娠することもあるので、もうほかの方法は無理なのかと決めつけず、柔軟に考えてください。いずれにせよ、主治医との相互理解を深めて気になることはなんでも相談し、安心して治療に臨んでいただきたいですね。